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『イエスタデイ』ダニー・ボイルとリチャード・カーティスの、ビートルズ愛に溢れたロマンチック・コメディ

『イエスタデイ』ダニー・ボイルとリチャード・カーティスの、ビートルズ愛に溢れたロマンチック・コメディ

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映画全体に散りばめられたビートルズのエッセンス



 人はビートルズを前にすると思わず、素直な気持ちになってしまうものかもしれない。ビートルズの曲をモチーフにした『イエスタデイ』(19)を見て、そう思った。<ビートルズが消えてしまった世界>で起こる出来事を描いたファンタジーにして、ロマンティック・コメディ。売れないミュージシャンの主人公が、ある事故の後、世界からビートルズが消えていることに気づき、彼らの曲を歌うことで人気者となる。この設定はユニークだが、物語そのものは、ものすごくひねりがあるわけではない。登場する曲もビートルズの定番曲がずらり。もっとマニアックな曲を使って、マニアックな物語にもできたかもしれない。


 しかし、ビートルズ・ファンを公言する監督ダニー・ボイルと脚本リチャード・カーティスは、すごく素直なファンの気持ちでこの映画を撮ったのではないだろうか?若い時に彼らの歌を初めて聞いた時の喜びを観客と分かち合いたい!だから、設定は少しだけひねりつつも、分かりやすくて、素直な物語にしよう。その方がビートルズのいた60年代の(今より、のどかな)雰囲気に近いと考えたのかもしれない。



 また、あえて有名曲を選ぶことで、こんな曲さえも知られていない時代が来てしまった時の感覚を分かりやすく伝えたかったのだろう。最初に主人公ジャックが歌うのは「イエスタデイ」。軽い気持ちでギターを片手に口ずさんだら、みんながそのすばらしさに衝撃を受け、「いつ書いたの?」と驚く。これがビートルズのマニアックな曲だとジョークが生きない。いろいろ考えた上であえて有名曲を中心に選んだのだろう。


 物語の途中、ビートルズゆかりのリバプールを訪ねる場面なんて、お上りさん的な楽しさがいっぱい。きっと、ボイルも、カーティスも、ビートルズを初めて体験した頃の初々しい気持ちに戻って、一緒に旅に出たのではないだろうか。ストロベリー・フィールズやエリナー・リグビーの墓など、リバプールのビートルズゆかりの聖地めぐり。これはもうファンが一度は体験してみたいと考えること。



 ふだんはもっとひねりのある映画を作っていたボイルだが、今回は無邪気な気持ちでビートルズの世界に向き合ったのだろう。素直な楽しさが全編に満ちている。ビートルズの曲を自分たちの映画に持ち込み、かつてのメンバーたちの承認も得て、自分たちが選んだ男優(ヒメーシュ・パテル)に歌わせる。音楽好きであるボイルとカーティスは、そこに贅沢な喜びも見出したはずだ。



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