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『イエスタデイ』ダニー・ボイルとリチャード・カーティスの、ビートルズ愛に溢れたロマンチック・コメディ

『イエスタデイ』ダニー・ボイルとリチャード・カーティスの、ビートルズ愛に溢れたロマンチック・コメディ

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イギリス的生活の素朴な魅力



 中盤には「ヒア・カム・ザ・サン」のメロディと共に太陽ギラギラのLAが登場する。ジャックが本格的にショービジネス界に取り込まれていくこの場面は、かなり風刺的で、ふとウディ・アレンの『アニー・ホール』(77)のLAでのテレビ界の描写を連想させた(テレビに好意を持っていないことが分かる場面だった)。


 カーティス作品にはアレンのような自虐的なネタは出てこないし、ユダヤ的なアクの強さもないが、ミスター・ビーンが出るテレビシリーズや映画の脚本を手掛けていることから考えると、やはり、どこかアレンに通じるコミック感覚もあると思う。


 LAの場面では、いかにも“やり手”風の音楽界のマネージャー、デブラ(ケイト・マッキノン)が登場して、ジャックのことを「製品(プロダクト)」と呼び、西海岸風のコマーシャリズムを見せつける(歌手の意思などおかまいなしで、どんどん売るための戦略が進められる)。ボイルもカーティスも英国人なので、このあたりの描写にはどこかアメリカの商業主義への風刺も感じられた。




 イギリス人は素朴ながらもマイペースな生活を好む傾向があると思うが、この映画にもそんなイギリス的な生活の素朴な味わいがあって、そこも大きな魅力になっている(舞台となるサフォークの街の風景も美しい)。そして、素朴な人生を象徴するような人物が後半に登場してドラマの中で重要な役割を果たすことになる(とても胸にしみる場面だ)。


 ヒメーシュ・パテルが歌うビートルズ・ナンバーに関してエド・シーランは「歌はうまいが、けっして人工的な感じにはならないし、訓練された歌手の声でもない。でも、すごくハートがあると思う」とあるインタビューで語っていた。


 映画の中の歌は、ふだんは撮影より先に録音され、俳優は口パクで歌ことが多いが、この映画では同時録音(つまりライブ録音)になっているという。そして、次第にスターダムを駆け上がる主人公の複雑な心情がビートルズ・ナンバーに託されることで、それぞれのナンバーが妙にリアルに聞こえる。




 ヒメーシュの歌だけではなく、映画そのものにハートがあるから、見る人のエモーションに訴える力があるのだろう。


「イエスタデイ」はカーティスお得意のコメディ感覚や素朴な生活観に、ボイル的な生々しい音楽センスが加わることで、本当に愛すべき作品になっている。



文:大森さわこ

映画ジャーナリスト。著書に「ロスト・シネマ」(河出書房新社)他、

訳書に「ウディ」(D・エヴァニアー著、キネマ旬報社)他。雑誌は「週刊女性」、「ミュージック・マガジン」、「キネマ旬報」等に寄稿。ウエブ連載をもとにした取材本、「ミニシアター再訪」も刊行予定。



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『イエスタデイ』

10月11日(金) 全国ロードショー!

配給宣伝:東宝東和 ©Universal Pictures

■公式サイト:https://yesterdaymovie.jp/ 

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※2019年10月記事掲載時の情報です。

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