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『異端の鳥』正視に耐えられないシーンを乗り越えた先に待つ、崇高な感動

『異端の鳥』正視に耐えられないシーンを乗り越えた先に待つ、崇高な感動

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ハネケやトリアーとも別種の衝撃描写



 たとえばこれがホラーや、スリラー、スプラッターのジャンルなら、『ソウ』シリーズのように残虐極まりないシーンの連続も想定される。しかし『異端の鳥』は、ホロコーストを逃れて疎開した少年が、身寄りを失くし、孤独に過酷な旅を続ける。一見、ヒューマンな物語であるようで、行く先々で彼が見舞われる、壮絶極まりない運命が展開。まるで「地獄めぐり」の様相を呈していく。


 ホラーやスリラー以外で、神経を逆撫でするほどのショッキングで鮮烈な描写といえば、たとえばギャスパー・ノエ、ラース・フォン・トリアー、ミヒャエル・ハネケらの作品が思い浮かぶが、『異端の鳥』における多種多様な衝撃シーンは、第二次世界大戦中を背景にしながら、現在も世界中で起こり続けている人間の残虐非道な行いをも象徴している。少なくともそう考えさせるので普遍的だ。




 この感覚は、今から45年前の1975年の、ピエル・パオロ・パゾリーニ監督の『ソドムの市』に似ているかもしれない。ナチス占領下のイタリアの屋敷で、ファシストが少年少女に変態行為を強いる、映画史に残る大問題作。過剰なまでの拷問やスカトロ、性器の露出で、欧米では上映禁止になったが、その裏には現代社会への痛烈な批判も込められていた。


 『異端の鳥』にも、「自分たちとは違う者への過激な差別や排除」を中心に、時代を超えて変わらない人間の悪意に対し、過剰な表現をもって警鐘を鳴らしている。原題の「ペインテッド・バード(色を塗られた鳥)」とは、周囲と異なる存在を意味する。


 チェコ出身のヴァーツラフ・マルホウル監督は、この『異端の鳥』をモノクロの35mmフィルムで撮影。そのおかげで衝撃シーン以上に印象を残すのは、荘厳な映像美でもある。


 原作「ペインテッド・バード」の方は、さらに輪をかけて過激な表現が多い、こちらも超問題作である。マルホウル監督はその原作に惚れ込み、11年をかけて映画の完成にこぎつけた。撮影期間だけで2年。主人公の少年の成長をフィルムに焼き付けるためという徹底ぶりだ。



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