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『オン・ザ・ロック』ソフィア・コッポラが描く、ダイバーシティとニューヨーク、そしてミドルエイジ

(c)2020 SCIC Intl Photo Courtesy of Apple

『オン・ザ・ロック』ソフィア・コッポラが描く、ダイバーシティとニューヨーク、そしてミドルエイジ

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恐るべき『ドン・ジョヴァンニ』の選曲センス



 最後に、音楽についても触れておこう。これまでのフィルモグラフィーで、Air、はっぴいえんど、New OrderThe Cureらのナンバーを印象的に散りばめてきたソフィア・コッポラの鋭敏な音楽センスについては、改めて語るまでもないだろう。本作でも、冒頭からチェット・ベイカーのメロウな歌声が響き渡り、ラストではソフィアのパートナーでもあるトーマス・マーズがヴォーカルを務めるPhoenixの『Identical』が心地よく映画を締める。


 筆者が特に興味を引かれたのが、マイケル・ナイマンの『In Re Don Giovanni』。映画の予告編にも使われているので、耳馴染みのある読者も多いことだろう。オリジナルは、女たらしの貴族が主人公の歌劇『ドン・ジョヴァンニ』の第1幕で歌われる、『カタログの歌』。ソフィアは、「フェリックスは現代のドン・ジョヴァンニ」ということから、このクラシックをチョイスしたのかもしれない。



『オン・ザ・ロック』(c)2020 SCIC Intl Photo Courtesy of Apple


 1787年にモーツァルトが作曲したこの歌曲を、マイケル・ナイマンはほとんどミニマル・ミュージックのような大胆な解釈でアレンジ。“古きもの”を否定せず、受け入れることで、モダンでありながらコンテンポラリーな一曲が誕生した。それはこの作品のテーマであるダイバーシティにも完全マッチ。そこまで計算していたとするなら、ソフィア・コッポラおそるべし!


 余談だが、ラシダ・ジョーンズの父親はプレイボーイとして鳴らしたミュージシャンのクインシー・ジョーンズ。彼の代表曲『愛のコリーダ』が映画で流れたらどうしようと身構えていたんだが、さすがにそれはなかった。良かった。



文:竹島ルイ

ヒットガールに蹴られたい、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」主宰。



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作品情報を見る



『オン・ザ・ロック』

配給:東北新社 STAR CHANNEL presents

2020年10月2日(金)全国ロードショー、10月23日(金)よりApple TV+ にて世界配信。

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