2018.03.01
Index
- すべてのきっかけは『白い肌の異常な夜』との出会い
- シーゲルとイーストウッド、師弟コンビの挑戦作
- イーストウッドとファレルの演じ方はどう違う?
- それぞれの作品の質感と、女性たちの描きかた
- アフリカン・アメリカンのメイドの不在
すべてのきっかけは『白い肌の異常な夜』との出会い
ソフィア・コッポラにカンヌ映画祭監督賞をもたらした最新作『The Beguiled / ビガイルド 欲望のめざめ』。彼女は決して“雇われ監督”的な映画作りには与(くみ)しないので、本作でもまた、激しく心を突き動かされる題材とのファースト・インプレッションが重要となった。とはいえ、それがまさかクリント・イーストウッドの主演作からもたらされることになるなんて、彼女自身、思いもしなかっただろう。
それは『SOMEWHERE』を製作している頃のこと。ソフィアはプロダクション・デザイナーのアン・ロスやその他の古い付き合いの仲間たちから「きっと気にいると思う」と、イーストウッド主演作『白い肌の異常な夜』(71)を薦められた。前々からタイトルだけは耳にしていたけれど、一度も観る機会はなかったこの映画。実際に鑑賞してみて、ソフィアは本作に張り詰めた異様な雰囲気、やがて訪れる予期せぬ展開、そして何よりも、女性だらけの世界に男性が一人だけ紛れこむというドラマ性に惹かれたという。
しかし彼女の中に「この映画をリメイクしたい」という考えは更々なかった。彼女の目に留まったのは、むしろその源泉だ。トーマス・カリナンが著した原作小説へと立ち返り、この物語をもっと“女性の目線”で深く掘り下げ、再解釈することはできないだろうか。そうすればきっと自分らしい作品が描けるはず――――。このような思いを巡らした末、同じ原作をベースとした“二つ目のバージョン”が映画史に産み落とされることになった。