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『The Beguiled / ビガイルド 欲望のめざめ』ソフィア・コッポラに着想を与えたイーストウッド主演映画とは?※注!ネタバレ含みます。
2018.03.01
それぞれの作品の質感と、女性たちの描きかた
両作は同じストーリーながらも、語りのテンションや寄宿舎内の描き方も随分と違う。例えばソフィアの『ビガイルド』では、カメラワーク的にも動きが少なく、むしろ静止した画面の中をどれくらい美しく彩っていくかに繊細なこだわりを見せている。女性たちの暮らしぶりも実にシンプルで、感情は抑制され、慎ましい。
『The Beguiled / ビガイルド 欲望のめざめ』©2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved.
これに比べて『白い肌の異常な夜』は、カメラの動きが序盤からかなりアクティブで、狭い屋内にもかかわらず、いやそうであるがゆえに、観客を飽きさせぬように様々な切り返しや人物へのズームアップを多用する手法がとられている。また、女性たちの妄想を盛り込んだり、あるいは随所に女性たちの“心の声”を交えて、赤裸々な本音を観客へそのまま率直に伝えているのも大きな特徴だ。
だが、最も注目すべき大きな違いは、後半にあった。これについての具体的な言及は口が裂けてもできないが、ソフィア版ではマクバーニーの予断を許さぬ怪我の深刻さを受けて、止むに止まれず処置が行われるのに対し、シーゲル版では女性たち(特に園長)の“剥き出しの意図”が先行し、狂気さえにじませながら、決断を下す場面が描かれる。即席の手術道具がずらりと並ぶ壮観な図、それを見つめる女性たちの異様な表情は、『白い肌の異常な夜』を伝説の異色作とならしめた一つの要因といえよう。ここから互いの感情がさらに激しくぶつかり合い、男女の最終対決が描かれていくのである。