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『The Beguiled / ビガイルド 欲望のめざめ』ソフィア・コッポラに着想を与えたイーストウッド主演映画とは?※注!ネタバレ含みます。

『The Beguiled / ビガイルド 欲望のめざめ』ソフィア・コッポラに着想を与えたイーストウッド主演映画とは?※注!ネタバレ含みます。


イーストウッドとファレルの演じ方はどう違う?



 さて、これら同じ原作をもとにした二つの映画作品(1971年版、2017年版)には、一体どのような違いがあるのだろうか。


 まず大きな差が出たのは冒頭の描き方だ。シーゲル版ではクレジットに合わせて南北戦争の記録写真が映し出される。それらは勇猛果敢な兵士の姿などではなく、戦場に横たわるおびただしい数の亡骸の写真だ。そこにどこからともなく聴こえてくるのは「決して兵隊にはなるな。若者に銃を持たせるな」という趣旨のかすかな歌声。なるほど、71年といえばベトナム戦争が泥沼化し、全米で反戦ムードが高まる頃。シーゲルとイーストウッドはこの昔話に、当時の時代性を色濃くオーバーラップさせようとしたのかもしれない。我々はそうやってセピア色の古い写真に誘われるかのように、最初の舞台となるヴァージニア州の「森」へと足を踏み入れるのである。


 これに比べて、ソフィアの描き方は実に対極的だ。「森」はおとぎ話に紛れ込んだみたいに美しく、幻想的に描かれている。特に少女がたどる一本道は両側から木々が大量に生い茂り、まるで大自然が作り上げた天然のトンネルのようにも見える。少女はその薄暗い中を、眩い陽光が差し込む向こう側を目指して、ひたすら歩いていく。すでにこの場面から邦題にもある「めざめ」のイメージが刻印されているのである。


 そこで姿を見せる傷ついた北軍兵士がひとり。つまり南部のこの地に暮らす人々からすると敵兵である。足を銃で何発も撃ち抜かれ、もはや動くこともままならない彼の名はジョン・マクバーニー。息も絶え絶えに少女と言葉を交わし、やがて男子禁制の女子寄宿舎へと運び込まれていく。この兵士の人物像も、イーストウッドとコリン・ファレルとでは全くの別物だ。




 今回、ファレルは自身のアイルランド訛りをそのまま用いて、アイルランド出身の北軍兵士の役を演じた。それはつまり、彼が飢饉と貧困を理由に祖国を離れた移民であることを意味し、大義名分のためではなく金のために(あるいは、祖国にいる家族への仕送りのために)この戦争に参加していることがわかる。原作を紐解くと、田舎者であることを理由に軍隊内で小馬鹿にされたという記述もあり、彼自身もまたある種の疎外感を持ってこの場に流れ着いた人物であることがうかがえる。


 ファレルの演じるマクバーニーは優しく、素朴だ。かといって賢くもなければ、計算高くもない。それゆえ彼の言葉には姑息さは感じられず、その純粋さゆえに寄宿舎の女性たちの誰もがにこやかに心を寄せるようになる。


 一方のイーストウッドはどうだろう。こちらは何しろカリスマ性に満ちている。頭も切れ、観察力も鋭い。女性たちに甘い言葉を囁き、すぐにキスをする。必要とあれば平気で嘘もつく。性欲を持て余しながらも、しかし何より敵陣であるここから生きて逃れることの方がすべての目的であるように思えてくる。だが彼の場合、この計算高さが逆に大きな転落へ繋がっていった気がしないでもない。



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