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『大統領の料理人』ミッテランを唸らせた“おふくろの味”。そこにあった苦い隠し味とは

Les Saveurs du Palais (C)2012 -Armada Films- Vendome Production -Wild Bunch -France 2 Cinema

『大統領の料理人』ミッテランを唸らせた“おふくろの味”。そこにあった苦い隠し味とは

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『大統領の料理人』あらすじ

片田舎で小さなレストランを営むオルタンスが、スカウトされ連れて来られた新しい勤務先はエリゼ宮。そこはなんと、フランス大統領官邸のプライベートキッチンだった。堅苦しいメニュー、規律に縛られた食事スタイル、そして嫉妬うずまく官邸料理人たちの中で、彼女が作り出すのは<美味しい>の本当の意味を追求した料理の数々。最初は値踏みするような目で遠巻きに眺めていた同僚たちも、いつしか彼女の料理の腕と情熱に刺激され、官邸の厨房には少しずつ新しい風が吹き始める。やがて大統領のお皿に食べ残しがなくなってきたある日、彼女に直接声をかけてきた大統領の口から意外な話が飛び出す—。



食を介して人と人とが繋がる。この心と舌の素敵な関係を、フランス大統領官邸、通称エリゼ宮を舞台に描く実話の映画化である。


Index


ミッテラン大統領の専属料理人に指名された女性シェフ



 第21代フランス大統領フランソワ・ミッテランの専属料理人として、2年間仕えたダニエル・デルプシュの体験に基づく本作。彼女が仕切るのはサブの厨房で、主厨房では大勢の男性シェフたちがひしめき合い、エリゼ宮で行われる公式な晩餐会などのために、最高級のフランス料理が作られている。料理の世界はまさに男の世界なのだ。


 この性差別問題は後で書くとして、まずは、デルプシュをモデルにしたヒロイン、オルタンス(カトリーヌ・フロ/第38回セザール賞主演女優賞候補)が情熱を込めて紡ぎ出す極上の料理を紹介しよう。食通で知られるミッテランを唸らせた”おふくろの味”である。


『大統領の料理人』予告



スクランブルエッグのポルチーニ添えに代表される懐かしい味



 高級トリュフの産地として知られる、フランス南西部の田舎町ペリゴールから、大統領のためにはるばるエリゼ宮にやって来たオルタンス。早速彼女は、頭に浮かんだ料理を手早く作り始める。


 キャベツの葉の間に薄くサーモンを敷き詰めて、ミルフィーユ状に仕上げるサーモンのファルシ、アスパラガスのポタージュ、スクランブルエッグのポルチーニ添え、牛ヒレのパイ包み焼き、そして、ベリーのタルト。それらは全部、フランス人なら誰もが子供の頃から親しんできた”おふくろの味”、もしくは人によっては”おばあちゃんの味”だ。


 オルタンスの味に満足した大統領は、彼女にこう言う。「スクランブルエッグのポルチーニ添えは、僕にとってまさに”祖母の味”なんだ」と。


 ちなみに、ミッテラン大統領を演じるのは、作家でありジャーナリストのジャン・ドルメッソン(2017年に92歳で他界)。1974年から1983年まで”フィガロ紙”のCEOを務め、デスタン、ミッテラン、シラク、サルコジと歴代の大統領の相談役を務めた。ミッテランにとっては政敵だったという説もあり、もしそうだとしたら、フランス映画らしいエスプリが効いたキャスティングだ。



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