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キャスリン・ビグロー監督作『ゼロ・ダーク・サーティ』にみる、ビン・ラーディン殺害までの「真実」

(c)Photofest / Getty Images

キャスリン・ビグロー監督作『ゼロ・ダーク・サーティ』にみる、ビン・ラーディン殺害までの「真実」

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『ゼロ・ダーク・サーティ』あらすじ

ビンラディンの行方を追うため、情報収集力と分析力を誇るCIA分析官のマヤは、2003年にCIAパキスタン支局に配属される。巨額の予算を投入した捜査は一向に進展せず、世界各国で新たな血が次々と流されていく。そんな中、友人のジェシカが自爆テロの犠牲となって命を落としてしまう。それを機に、マヤの中でビンラディン捕獲という職務が狂気じみた執心へと変貌。ついに、彼が身を隠している場所を特定することに成功するが……。


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稀代の女流作家キャスリン・ビグロー



 男女間の賃金格差、社会的分離など、ジェンダーをめぐる不平等は目下の課題となっている。映画業界でも、ハリウッドの第一線では、女性監督の登用はあまり進んでいないのが実情だ。しかし、そういう逆境の中で着実にキャリアを築き上げ、圧倒的な存在感を放ち続ける、稀代の女流作家がいる。キャスリン・ビグローだ。


 爆弾処理班の視点から、戦場の厳しい現実を描いた『ハート・ロッカー』(08)で、アカデミー賞作品賞、監督賞をはじめ、主要6部門を受賞。同作では、女性監督として史上初の監督賞に輝き、また近年では、60年代後半の暴動事件を捉えた『デトロイト』(17)が高く評価された。緊迫のサスペンスを描かせれば、間違いなくトップクラスの演出家である。


『ハート・ロッカー』予告


 映画監督として最高のキャリアを誇る彼女だが、初期の頃は現代アートに傾倒する芸術志望の学生だった。地元の高校を卒業した彼女は、サンフランシスコ美術大学に進学し、芸術のイロハを学ぶなど画家を目指していたそうだ。同校卒業後は、ホイットニー美術館で育成プログラムに参加するなど、アートの見識をさらに深めた。その後、コロンビア大学芸術大学院に入学し、ここで映画理論を専攻。彼女はこの在学中に、短編映画『The Set-Up(原題)』を制作し、映像の世界へと飛び込んだ。


 初の商業用長編作となる『ラブレス』(82)を(モンティ・モンゴメリーと)共同監督し、次いで『ニア・ダーク/月の出来事』(87)で、単独の監督デビューを飾って以来、彼女は、様々なジャンルを描き出している。例えば、キアヌ・リーヴス、パトリック・スウェイジ共演の『ハートブルー』(91)では、FBI捜査官と銀行強盗犯の相容れぬ友情をアクションを交えて描写し、レイフ・ファインズ主演の『ストレンジ・デイズ/1999年12月31日』(95)では、他人の記憶を体感できるヴァーチャル・システムを軸に、近未来の世界をサスペンスフルに映し出している。


『ハートブルー』予告


 そして、前述の『ハート・ロッカー』を経て、次に彼女が題材に選んだのは、ウサーマ・ビン・ラーディン(作中での表記はオサマ・ビンラディン)殺害までの知られざる“真実”だった。第85回アカデミー賞で主要5部門にノミネートされた『ゼロ・ダーク・サーティ』(12)では、かつてのアルカーイダ指導者ウサーマ・ビン・ラーディン殺害までの顛末を、関係者の証言を基に、極めて克明に描き切っている。しかし、この映画は果たして本当に“真実”なのだろうか……。



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