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『リチャード・ジュエル』正義を安易に信じるな。90歳になるクリント・イーストウッドが映画に込めたもの

(c) 2019 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

『リチャード・ジュエル』正義を安易に信じるな。90歳になるクリント・イーストウッドが映画に込めたもの

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『リチャード・ジュエル』あらすじ

爆破事件の容疑者にされた男<リチャード・ジュエル>。その時、彼の味方になったのは、無謀な弁護士だった。今、全国民を相手に反撃が始まる。1996年、アメリカ・アトランタで起きた爆破事件。数千人の命を救ったのは、勇気ある警備員のリチャード・ジュエルだった。しかし、国家とメディアの陰謀で、彼は容疑者として、顔と実名を世界中に晒されてしまう…。過熱する報道、FBIの執拗な追求、世論からの誹謗中傷。しかし、たった一人、彼の無実を信じる無謀な弁護士ワトソンがいた。リチャードとワトソンは、巨大な権力に立ち向かうのだがーー



 2020年5月で90歳になるクリント・イーストウッドは、マーティン・スコセッシ(現在77歳)よりもひと回り年上。にもかかわらず、2000年代に入ってほぼ毎年1本、時には2本のハイペースで新作を発表しているのは驚異的だ。長寿の秘訣は瞑想とヴィーガン食だというが、他にも何か秘密がありそうな気がする。


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爆弾テロの第一通報者が第一容疑者になったわけ



 さて、そんなイーストウッドの監督最新作『リチャード・ジュエル』は、アトランタ・オリンピック開催中の公園で起きた、爆破テロ事件を描く実録ドラマだ。主人公の警備員リチャード・ジュエルは、公園内のベンチ下にセットされたパイプ爆弾をいち早く発見、被害を最小限に食い止めたことから一躍英雄となる。ところが、FBIがジュエルに疑惑の目を向けていることをメディアが実名で報道、一転、彼は第一容疑者のレッテルを貼られてしまう。


『リチャード・ジュエル』予告


 現代社会に於けるメディア・リンチ(犯罪事件等で、メディアが庶民感情を煽る形で被害者や加害者のプライバシーを一方的に垂れ流すこと)の深い闇が、個人を奈落の底に突き落とす構図は、『ハドソン川の奇跡』(16)と共通するし、同じく、実在する市井のヒーローを描いたという意味では、『15時17分、パリ行き』(17)ともリンクする。



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