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『リチャード・ジュエル』正義を安易に信じるな。90歳になるクリント・イーストウッドが映画に込めたもの

『リチャード・ジュエル』正義を安易に信じるな。90歳になるクリント・イーストウッドが映画に込めたもの


メディアは存在価値を証明したかった?



 メディアはどうか。過去にもショウから特ダネをゲットしたことがある、アトランタ・ジャーナルのキャシー・スクラッグス(常時ハイテンションを維持するオリビア・ワイルド)は、同紙のフロントページにジュエル容疑者説を掲載。彼の経歴や家庭環境がプロファイリングと合致することにも言及、やがてそれはメディア全体に広がり、国際ニュースにまで発展していく。


 ジュエルと母親が状況を把握したのは、すでに事態が収集不能になってからだ。アトランタ・ジャーナルに関して言うと、地元で開催されるオリンピックは、ローカル・メディアのコードブルー(蘇生の好機)であり、世界中の視線が集中する。そこで起きたテロ事件で、たとえ確証はなくてもいち早く犯人を特定することは、自らの存在価値をアピールする絶好のチャンスだったという見方もある。




 いずれにせよ、SNSも巻き込み猛スピードで拡散されるフェイクニュースと、メディア・リンチの恐怖は、まさに今日的なテーマであり、そこにスポットを当てたのはイーストウッドが今なお社会の闇と果敢に対峙している証拠でもある。



物事は単純に白黒では判断できない



 さらに、イーストウッドがイーストウッドである所以は、ジュエルを決して清廉潔白な人間ではないことをきっちりと描いている点だ。そして、物事を安易に白か黒かで処理しようとする現代人に対して、純粋な愛国心を持ったジュエルのような人物が、多少の問題だけでテロリストとして断罪されようとする矛盾を、さりげなく突きつけている点だ。




 俗に言う正義ほど怪しいものはない。それは、かつての盟友、ドン・シーゲル監督と共に放った初期のスマッシュヒット『ダーティ・ハリー』(71)の主人公、ハリー刑事(イーストウッド)が、職務のためとはいえ、何のてらいもなく犯人に怒りの銃弾を放って以来、イーストウッドが常に描いて来たライフワーク的テーマ。その最新アップデート版が『リチャード・ジュエル』なのだ。



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