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『ロミオ+ジュリエット』いまこそ観るべき「分断」の物語

(c)Photofest / Getty Images

『ロミオ+ジュリエット』いまこそ観るべき「分断」の物語

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『ロミオ+ジュリエット』あらすじ

現代、ヴェローナ・ビーチというメキシコに似た街。そこでは、モンタギュー家とキャピュレット家の二大マフィアによる抗争が繰り広げられていた。ある日、モンタギュー家の一人息子ロミオは、キャピュレット家のパーティーに変装をして乗り込み、そこにいたジュリエットという女性に一目惚れする。しかし、ジュリエットがキャピュレット家の一人娘であると判明し、ロミオは衝撃を受けるのだが...。


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いつの時代にも絶えず生まれる「分断」



 世界のあらゆるところで分断の溝が深まっている──と、現在感じないわけにはいかない。これはいまにはじまったことではないのだと、歴史を振り返ってみれば明白なのだけれど、より身をもって強く感じているところだ。世界規模での「分断」を考えるとあまりに大きく、手に負えない気がするものの、私たちのごく身近なところでだって同じこと。ささいな価値観の違いで分断は生まれる。


 そのような分断によって私たちは数多くの悲しみを経験してきたし、分断から生まれる悲劇は、文学、演劇、映画と、古典から現代劇にいたるまで古今東西の作品にみられる。『ムーラン・ルージュ』(01)や『華麗なるギャツビー』(13)などのバズ・ラーマン監督が1996年に手がけた『ロミオ+ジュリエット』もまた、この系譜に位置づけられる作品だ。原作は言わずもがな、ウィリアム・シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」である。


『ロミオ+ジュリエット』予告


 代々、対立関係にあるモンタギュー家とキャピュレット家。モンタギュー家の息子・ロミオとキャピュレット家の娘・ジュリエットという若い男女は激しい恋に落ちるものの、二人を阻む溝はあまりに深い。彼らが惹かれ合うほどに、両家の間に脈々と受け継がれてきた“憎しみ”は浮き彫りになり、やがて二人の仲は完全に引き裂かれ、非業の最期を迎えることとなる──というあらすじは、広く知られていることだろう。


 これが本作では、物語のあらましはそのままに、“現代”へと諸々の設定が変更されている。豪奢な衣装はアロハシャツに変わり、男たちが手にするのは剣ではなく拳銃。城はなく、ロミオ(レオナルド・ディカプリオ)とジュリエット(クレア・デインズ)を囲むのは高層ビル群である。


 三神勲の訳による「ロミオとジュリエット」の巻末に採録されているシェイクスピアの“創作年表”には、同作が発表されたのは1594年から1595年頃のことと記されている。バズ・ラーマンが映画化した約400年前だ。そして、映画の製作から25年以上が経った現在。いつの時代にも絶えず「分断」の亀裂が生じるのだということを、改めて思い知らされる。




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