『アビエイター』あらすじ
ヒューズは父から受けた莫大な遺産を元手として、夢のひとつであった映画製作をハリウッドで撮影。映画のために私有空軍まで持つ破天荒な行いとキャサリン・ヘップバーンなど数々の女優との恋愛で、ハリウッドの寵児となる。また大手航空会社のオーナーになるなど、話題には事欠かなかったが、そんな彼も中年になると精神を病んでいき…。
Index
- マーティン・スコセッシ監督が描く映画と飛行機の夢に生きた破格の男
- 大ヒットしたけど赤字! ハリウッド初期の超大作『地獄の天使』のとんでもない製作秘話
- プロデューサー兼主演、レオナルド・ディカプリオがヒューズの「孤独」に託した想いとは?
マーティン・スコセッシ監督が描く映画と飛行機の夢に生きた破格の男
手に入れたものは、カネ、オンナ、映画、飛行機。テキサス出身の事業家、ハワード・ヒューズ(本名ハワード・ロバード・ヒューズ・ジュニア/1905年生~1976年没)は、コッテコテの「男の夢」を典型的かつ網羅的に体現した伝説の超大物だ。
石油王として成り上がった父のもと、大富豪の御曹司として若くしてハリウッドに乗り込み、映画製作に手を染める。やがて飛行機のパイロットとして、アメリカ大陸横断のスピード記録を二度も樹立し(あの高名な飛行士、チャールズ・リンドバーグのニューヨーク~パリ間の記録も半分に短縮!)、マニア的な趣味が高じる形で航空会社を運営。ルックスは6フィート3インチ(約190cm)の長身で俳優顔負けのイケメン。時代を代表する数多くの女優たちと浮き名を流した。
もう笑っちゃうくらいのスーパーセレブぶり。だが眩い人生の光の反面、その強烈なコントラストとして、彼は影の部分もまた桁外れに巨大だった。10代の時に両親を続けて亡くし、やがて飛行機の墜落事故を数回経験。とりわけ1946年には試験機の操縦中に機体が故障してロサンゼルス郊外の住宅地に突っ込み、全身の78%という瀕死の大火傷を負う。その後遺症のせいもあって以降は心身を深く病み、晩年は最高級ホテルで隠遁生活を送った。また極端な潔癖症や秘密主義でも知られ、一般にはエキセントリックな人物像のイメージが強いかもしれない。
『アビエイター』(c)Photofest / Getty Images
ヒューズの伝記本や関連本はたくさん刊行されているのだが、その中でも簡潔にまとまった読みやすいものとして、藤田勝啓著『ハワード・ヒューズ ヒコーキ物語』(2005年/イカロス出版刊)をお勧めしておきたい。本著でも華やかなプレイボーイ像の反面、もともと内向的な性格で人前に出るのを嫌っていたことなどが語られている。パーティーなども苦手で、ラフな服装や食事を好み、酒もほとんど飲めなかったらしい。
そんな破天荒かつ謎多き男の半生を、名匠マーティン・スコセッシ監督が映画化した2004年の大作が『アビエイター』だ。意外にスコセッシの中では人気作に挙がることの少ない作品だが、公開当時の評価は高く、第77回アカデミー賞では最多の5部門受賞(最優秀助演女優賞、撮影賞、編集賞、美術賞、衣装デザイン賞)に輝いている。