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『グッドフェローズ』がギャング映画にもたらした画期的なニュースタイルとは

『グッドフェローズ』がギャング映画にもたらした画期的なニュースタイルとは

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『ゴッドファーザー』の神話を解体した『グッドフェローズ』のアンチドラマ性



 「ガキの頃からギャングになりたかった。大統領よりもギャングが憧れだった」――。


 そう語るのはニューヨークきっての伝説のワル――実在のギャングスター、ヘンリー・ヒル(1943年生~2012年没)。シチリア系の母とアイルランド系の父のもとに生まれ、11歳からマフィアの仲間入りをして裏社会でのし上がった彼の破格のアウトロー人生を追ったのが、1990年の傑作映画『 グッドフェローズ』だ。


 ニコラス・ピレッジのノンフィクション小説『 ワイズガイ――わが憧れのマフィア人生――』(平尾圭吾訳で1989年に徳間書店より刊行。翌年、映画公開に合わせて『グッドフェローズ』との改題で文庫化された)が原作。監督を務めたのは名匠マーティン・スコセッシ。彼はヘンリー・ヒルとまったく同世代(1942年生まれ)であり、やはりシチリア系イタリア移民のニューヨーカーだ。この稀代のシネアストの最高作は?と訊かれたら、ある者は『 タクシー・ドライバー』(76)、ある者は『 レイジング・ブル』(80)を挙げるだろう。しかし『グッドフェローズ』も負けてはいない。



 ひたすらバカで、陽気で狂っていて、モラルの欠片もなく、本能の壊れた獣のような男たちの生態が、ややペース早めの長距離マラソンのようなテンポ感で描かれていく。とにかくいつ何度観ても最高に面白いのだが、歴史的な画期性において位置づけると、ギャング映画のニュースタイルを提示した一本ということになる。


 もちろんそれまでのギャング映画――オールドスタイルの代表であり、総決算な金字塔に挙げられるのは、フランシス・フォード・コッポラ監督の『 ゴッドファーザー』(72)だ。ニューヨークのシチリア(イタリア)系マフィア、コルレオーネ一家をめぐる物語は、宿命的な因果関係や普遍的な親子の葛藤などが綴られ、よくギリシャ悲劇やシェイクスピアに喩えられる。




 架空のマフィア・ファミリーを描きつつ、内容は実際の裏社会のリアリティに基づいてはいるのだが、血で血を洗う暴力世界を重厚な人間ドラマとして、ある種美的に様式化したのが本作の卓越であった。対して、その神話をあっけらかんと解体したのが『グッドフェローズ』だ。人間ドラマという観点からすれば、ここには何もないのに等しい。アンチドラマ的とも言えるほど徹底した物語の流動が選び取られており、クロニクル(年代記)形式で画面に差し出されるのは、場当たり的に生きる者たちの「断片の連なり」である。


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