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『グッドフェローズ』がギャング映画にもたらした画期的なニュースタイルとは

『グッドフェローズ』がギャング映画にもたらした画期的なニュースタイルとは


もはや伝説のDJ選曲術――「いとしのレイラ」と「マイ・ウェイ」



 ポップという面で特筆すべきなのは音楽の使い方であろう。『グッドフェローズ』ではまさしくポップ・ミュージックの名曲群――数多くの珠玉のヒットナンバーがほぼ引っ切りなしに流れ続ける。またそれは、映画で既成曲を使う際の定石とは異なり、必ずしもシーンごとの時代背景を指し示すものではない。スコセッシの言葉によれば、選曲のセオリーは「ジュークボックス」だ。トニー・ベネットの「 ラグズ・トゥ・リッチズ」(53)やシャングリラスの「 リーダー・オブ・ザ・パック」(64)、クリームの「 サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ」(67)やローリング・ストーンズの「 ギミー・シェルター」(69)など、その時々のリクエストに応じるように40曲以上がギャングの破天荒な日常風景を彩っていく。




 こういった手法をスコセッシが開発したのは、初期の代表作『 ミーン・ストリート』(73)においてである。彼は自分の血肉となっているロネッツの「 ビー・マイ・ベイビー」(63)やローリング・ストーンズの「 ジャンピング・ジャック・フラッシュ」(69)などを、自らが育ったニューヨークのリトル・イタリーのストリートやバーの中に流した。言わば自分の好きな曲を、時代背景の説明や社会的な意味に還元されることなく使いまくるやり方。これはミックステープ的、あるいはDJ的とも言え、選曲自体に監督=作家の私性や趣味が色濃く浮き彫りになる。


 その『ミーン・ストリート』をプロトタイプとして、私性を音楽面でも対象化し、ひとつのガチガチの完成形へと高めたのが『グッドフェローズ』だと言える。また同様の方法論を、独自に発展継承した後続がクエンティン・タランティーノだ。彼は『 レザボア・ドッグス』(92)や『 パルプ・フィクション』(94)など、スコセッシ的な選曲法をセンスエリートの洗練へと推し進めた監督。いまや既成曲のDJ的構成術のスタンダードかつ無双の達人は、タランティーノだと認識している人が多いだろう。実はその前に元祖としてスコセッシが居たわけだが、彼本人は選曲の妙というよりも、音楽と映像のリズム的共闘で疾走力を強化する方向に向かい、自身の成果を『 カジノ』(95)や『 ウルフ・オブ・ウォールストリート』(13)などへと延長させている。


 現在、巧みに既成曲をコーディネイトする映画の存在は別に珍しくないが、しかし『グッドフェローズ』ほど、映像×音楽の化学反応でこちらの感覚中枢をダイレクトに刺激し、時にはエモーショナルに胸を掻き乱す傑出した例はほとんど見つからないだろう。特に後半部、デレク&ザ・ドミノス(エリック・クラプトンが在籍したバンド)の名曲「いとしのレイラ」(1970)が流れるシーンはもはや映画史上の伝説だ。



 ジミーとトミーが強奪事件に関わった人物たちを口封じのために次々と粛清。ゴミ収集車や冷凍庫の中など、至るところからギャングたちの死体がごろごろ見つかる。その無惨な光景に、デュアン・オールマンのスライドギターが効いたジム・ゴードンによる美しいピアノパートだけが流れる……この奥深く琴線に触れる情感は至上の素晴らしさ。


 そしてもうひとつの伝説が、最後を締めるシド・ヴィシャスの「 マイ・ウェイ」(78)! 無様になっても生き抜いていく“Fuck all”なヘンリー・ヒルのマイ・ウェイ。馬鹿馬鹿しくもちょっぴり切なく、笑っちゃうけど何だか泣けてくる。しかもシドの絶唱が終わったあと、「いとしのレイラ」のピアノパートが再び繋がれるのだ……。ああ、また観たくなってきたよ!



文: 森直人(もり・なおと)

映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「TV Bros.」「メンズノンノ」「キネマ旬報」「映画秘宝」「シネマトゥデイ」などで定期的に執筆中。


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『グッドフェローズ』

ブルーレイ ¥2,381+税/DVD ¥1,429 +税

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