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『ボディガード』映画の向こう側にあるケヴィン・コスナーの羨望とホイットニー・ヒューストンの確執
『ボディガード』あらすじ
世界でも有数のボディガードであるフランクは、ある時、歌手であり女優でもあるスーパースター、レイチェルの護衛を依頼される。彼女には脅迫状が送り付けられたりと、立て続けに不穏な事件が起こっているというのだ。フランクはレイチェルのボディガードとなるが、当のレイチェルは彼をただの邪魔者としか考えていなかった。しかし、ある事件でフランクに救われた事をきっかけに、レイチェルは徐々にフランクに心を開き、フランクもまたレイチェルに惹かれて行く。そんな中、再びレイチェルが何者かに狙われる…。
Index
ケヴィン・コスナーが憧れたスティーヴ・マックイーン
俳優スティーヴ・マックイーンは、ケヴィン・コスナーにとって憧れの存在。『ボディガード』(92)のコスナーには、ファッションスタイルや短いクールカットの髪型、リアクションや身のこなしなど、スティーヴ・マックイーンの影響が見てとれる。それもそのはず、もともと『ボディガード』は、スティーヴ・マックイーン主演の企画として脚本が書かれた作品だからだ。
その脚本は1975年頃にローレンス・カスダンが、コピーライターとして働きながら休日や夜間に推敲を重ねて執筆したもの。「僕はスティーヴ・マックイーンが大好きでね。『ボディガード』は彼が主演した『ブリット』(68)にも似ていると思う。それから(脚本を書いた1975年から)17年経って、僕と同じくマックイーンを敬愛していたケヴィン・コスナー主演の映画になったのだから、不思議なものだよね」と、歳月を経てコスナーが主演したことについてカスダンは述懐している。
『ブリット』予告
ローレンス・カスダンは、『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』(80)や『レイダース/失われたアーク<聖櫃>』(81)の脚本家として注目された人物。監督として『白いドレスの女』(81)や『再会の時』(83)などでも高い評価を得てきた。『再会の時』ではケヴィン・コスナーを主要キャストのひとりとして起用しながらも、彼の出演場面が編集で全てカットされると言う事態に。「また別の映画で頑張ろう」とコスナーを励まし、その言葉を有言実行させたのが、ローレンス・カスダン製作・監督・脚本の西部劇『シルバラード』(85)だった。
カスダンとコスナーが『ボディガード』で組んだ縁は、コスナーのキャリア初期にまで遡れるのだ。それゆえ、脚本におけるスティーヴ・マックイーンに対する魅力が、コスナーの魅力へと変換されていることは想像に難しくない。
『ボディガード』予告
『シルバラード』でスコット・グレンの弟役を演じたコスナーは、危険な場面のスタントを自らこなすことで“目立つ”ことにこだわった。このアプローチは、スターになってからもコスナーの方針となり、プロデューサーたちの頭を悩ませる種になるのだが……とりあえずここでは問わない。重要なのは、そのこだわりがスティーヴ・マックイーンのアプローチと同じだった点にある。マックイーンの出世作である『荒野の七人』(60)を観ると、主演俳優であるユル・ブリンナーの傍らで、ライフルに弾丸を装填する仕草、馬に跨る動作など、マックイーンが“目立つ”動きをしていることを確認できる。