往年のラブファンタジーを再映画化
ヴィクター・フレミング監督、スペンサー・トレイシー主演のファンタジー作品『A Guy Named Joe(原題)』(43)のリメイクである『オールウェイズ』は、中心人物を戦闘機パイロットから航空消防士に変えている点を除けば、基本的には第二次世界大戦の物語をそのまま踏襲している。リチャード・ドレイファスがトレイシーの役を、ホリー・ハンターがアイリーン・ダンの役を演じ、オードリー・ヘプバーンは“特別出演”とクレジットされ、天国からの使者ハップを好演している。
恋人が死んで霊となって現世に現われる。という本作の物語から、『ゴースト/ニューヨークの幻』(90)を思い起こさせるが、『オールウェイズ』は『ゴースト~』の公開よりも1年ほど早く封切りされているため、『ゴースト~』をはじめとする同種の映画の先駆けである点にも注目したい。
『A Guy Named Joe』予告
さて、この作品は、スピルバーグが何年も練り続けた宿願のプロジェクトだった。彼が『A Guy Named Joe』のリメイクを考えたのは、新鋭の映画監督として注目を浴びていた『ジョーズ』(75)を撮影しているときのこと。ただし、そのアイディアの源泉はスピルバーグではなく、『ジョーズ』の主演であるリチャード・ドレイファスの側から湧き出たもの。
ドレイファスは『A Guy Named Joe』を35回以上も観るほどの熱狂的なファンで、子どもの頃に深夜に観たというスピルバーグにとっては、「映画監督になるきっかけとなった作品の一つ」であり、空軍の退役軍人である父親が生きてきた時代との感傷的な結びつきを感じたのだという。
最初は冗談のような感じで飛び出したリメイク話だったが、次第に本格的なプロジェクトとして動き出すのだから、映画というのは何があるのか最後までわからないものだ。そのような経緯で製作された『オールウェイズ』は、『ジョーズ』『未知との遭遇』(77)という偉大な成功作に続く、スピルバーグとドレイファスの共作の集大成である。