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『突撃』スタンリー・キューブリックのエモーション溢れる反戦映画

© 1957 Harris Kubrick Pictures Corp. All Rights Reserved. © 2019 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

『突撃』スタンリー・キューブリックのエモーション溢れる反戦映画

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キューブリックらしからぬエモーショナルな手触り



 『突撃』は、典型的な二部構成の作品だ。前半では「西部戦線での激烈な塹壕戦」をスペクタクルに描き、一転して後半では「戦争の理不尽さを暴き出す軍法会議」を静かなトーンで描きだす。


 思い返してみれば、ベトナム戦争を題材にした『フルメタル・ジャケット』(87)も、アメリカ海兵隊に志願した主人公がキャンプで厳しい訓練を受ける前半と、ベトナムに派遣されて軍事オペレーションを展開する後半の二部構成。人類の進化前/進化後の『2001年宇宙の旅』(68)、洗脳前/洗脳後の『時計じかけのオレンジ』(71)など、二部構成好きキューブリックの趣味嗜好が表れた一番最初の例と言っていいだろう。


 構造的にはキューブリック映画の源流が横たわっているのだが、そのタッチは明かに違う。『突撃』には、神の視点から人類を俯瞰し、嘲笑するようなブラックユーモア感覚はない。冷め切ったニヒリズムもない。驚くほど開けっぴろげで、ストレートなまでに一本気な作品だ。カーク・ダグラス演じるダックス少佐が、軍法会議で「彼らへの告訴は人類への欺きです」と言い放つシーンは、キューブリック作品とは思えないくらいにエモーショナル。



『突撃』© 1957 Harris Kubrick Pictures Corp. All Rights Reserved. © 2019 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.


 ラストシーンも直球ど真ん中なエモ演出だ。フランス軍の溜まり場となっている酒場で、敵国のドイツ人少女が涙を浮かべながら歌を歌う(演じているのは、後にキューブリック夫人となるクリスティアーヌ・ハーラン)。その歌に思わず感動し、合唱する兵士たち。フランス人がフランス人を処刑するという不条理な物語を締めくくるのは、フランス人とドイツ人少女との不思議な連帯なのである。


 実は長い間、『突撃』はフランスでは上映されていなかった。フランス軍をあまりにも否定的に、愚かに描いていたからだ。フランスとの関係を悪化させないために、ドイツでも公開後数年間は上映が禁止されていたほど。しかし、本作は映画史に確実にその名を刻み、後のフィルムメーカーに大きな影響を与えた。例えばテリー・ギリアムは、「人生を大きく変えるような経験だった」と名言。『突撃』の塹壕シーンにインスパイアされて、『未来世紀ブラジル』(85)の長いトラッキング・ショットを撮った。サム・メンデスもまた、『1917 命をかけた伝令』(19)を製作するにあたって本作を見直したという。


 最後に、カーク・ダグラスの有名なキューブリック評でこの稿を閉じることにしよう。


 「(キューブリックは)才能あるクソッタレだ!」



文: 竹島ルイ 

ヒットガールに蹴られたい、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」主宰。



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『突撃』

発売元:アイ・ヴィー・シー

価格:Blu-ray¥4,800+税

© 1957 Harris Kubrick Pictures Corp. All Rights Reserved.

© 2019 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

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