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『トリコロール/青の愛』“音楽映画”として結実する愛の物語

(c)Photofest / Getty Images

『トリコロール/青の愛』“音楽映画”として結実する愛の物語

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青、白、赤──「トリコロール三部作」の第一作目



 「やっぱり死ねない」


 自動車事故によって夫と愛娘を一度に失ったジュリー(ジュリエット・ビノシュ)は、自らも大きな怪我を負い、搬送先の深夜の病院にて多量の薬物を口に含み自殺を図る。しかしそこで彼女は、この言葉を口にするのだ。「やっぱり死ねない」──と。


 クシシュトフ・キェシロフスキ監督による『トリコロール/青の愛』(93)は、『トリコロール/白の愛』(94)、『トリコロール/赤の愛』(94)と続く「トリコロール三部作」の一作目にあたるものだ。「トリコロール」とはご存知のとおり、青、白、赤の三色から成るフランスの国旗を示すもの。青は“自由”を、白は“平等”を、赤は“博愛”を象徴している。つまり、キェシロフスキによるこの三部作はそれぞれに、“自由”、“平等”、“博愛”をテーマとしたものになっているのだ。


 1993年に開催された第50回ヴェネツィア国際映画祭にて、金獅子賞のほか、女優賞と撮影賞を受賞した本作『トリコロール/青の愛』(以下、『青の愛』)で描かれているのは、“愛の呪縛からの自由(記憶からの再生)”だ。冒頭に記した一文は、本作のあらすじであり、物語の導入部でもある。耐え難いほどの大きな喪失を経験していながらジュリーが口にする「やっぱり死ねない」のひとことは、彼女が自由(=再生)を希求する存在であると端的に示しているだろう。これを起点に、物語ははじまる。



 本作は実際に劇中に見られる、視覚情報としての“青”が印象的な作品だ。開巻から終幕までブルーを基調とした映像で構成されており、プールをはじめとするいくつかの舞台や小物にいたるまで、終始私たちの目はこの色に引かれる。


 青色を目にして想起するものは、観客それぞれにとって異なるだろう。それは広大な空や海を思わせるものかもしれないし、はたまた「ブルーな気分」というような“憂鬱さ”を感じさせるものかもしれない。他者に真の感情を悟らせまいとするような、ジュリエット・ビノシュの抑制の効いた佇まいは、このどちらとも受け取ることができる。いまは亡き夫の不貞に対する態度は前者のようだが、それは必ずしも“寛容さ”であるとはかぎらない。いつ嵐が起きてもおかしくはない状況である。後者の“憂鬱さ”に関しては、突然の喪失によって計り知れない心理状態にあるのだから、もちろん「ブルーな気分」どころではない。




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