1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ハート・ロッカー
  4. 『ハート・ロッカー』キャスリン・ビグローが炙り出す、現代の戦場に充満する中毒性と依存性
『ハート・ロッカー』キャスリン・ビグローが炙り出す、現代の戦場に充満する中毒性と依存性

(c)Photofest / Getty Images

『ハート・ロッカー』キャスリン・ビグローが炙り出す、現代の戦場に充満する中毒性と依存性

PAGES


爆弾処理の予測不能の恐怖



 2004年夏、イラクの前線での爆発物処理シーンからこの映画は幕を開ける。通りの向こう側に即席爆発装置(Improvised Explosive Device, IED)を発見したブラボー中隊は、すぐに爆発物の処理を実行する。しかし、作業中の予期せぬ事態によって爆弾が大爆発を起こし、チームリーダーのトンプソン軍曹(ガイ・ピアース)が戦死。新たにジェームズ二等軍曹(ジェレミー・レナー)が赴任してくるのだが、この男がくせ者で、作業上のルールをことごとく無視するものだから、部下のサンボーン(アンソニー・マッキー)とエルドリッジ(ブライアン・ジェラティ)の不安は尽きない。


 米軍の爆発物処理班(Explosive Ordinance Division, EOD)は、イラクで要の存在であったにもかかわらず、この映画が公開される以前は、あまり知られていない存在だった。イラク戦争初期の2004年には、爆発物処理技術兵として訓練された米軍兵士は、150人しかいなかったそうだ。死と背中合わせの危険な仕事で、EODの兵士は他の軍人に比べて、死亡率は5倍高いとも言われている。



『ハート・ロッカー』(c)Photofest / Getty Images


 爆弾の破片だけでなく、爆発の際の衝撃波にも殺傷能力があるので、兵士たちには一瞬の油断も許されない。「即席爆発物が見つかると爆発物処理班が呼ばれ、彼らが処理する間、軍の他の兵士たちは皆、後方に退くんだ」、とボールは自身の経験を交えて説明する。『ハート・ロッカー』では、ブラボー中隊の面々に容赦なく牙を剥く予測不可能な恐怖と、その恐怖の中で爆弾解除に勤しむ緊迫の38日間を描いている。


 命がけの危険な仕事なので、EOD兵士の妻や家族は日々不安の中で生きている。妻との離別やトラブルは日常茶飯事で、EODとは「Everyone's Divorced(誰もかれも離婚している)」の略だとの冗談もあるくらいだ。主人公のジェームズも、妻とは離婚しているようだが、本国では離婚後も、妻と息子と同居しているようだ。


 第二次世界大戦下に創設された米陸軍爆発物処理班。その技術兵たちは、フロリダのエグリン空軍基地で訓練を受け、候補者は6か月に及ぶ訓練を耐えなければならない。医師にも相当する高い技術力を要する爆弾処理技術者は、現代の戦争には欠かすことのできない重要な役目なのである。




PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ハート・ロッカー
  4. 『ハート・ロッカー』キャスリン・ビグローが炙り出す、現代の戦場に充満する中毒性と依存性