野球を愛するケヴィン・コスナー
古くは『打撃王』(42)、近年では『マネーボール』(11)など、野球を題材にした映画には評価の高い作品が多い。一方で、国際的にはプロ野球の盛んな国が少ないため、ハリウッドで製作された<野球映画>の本数は、それほど多くないという実情がある。その理由のひとつには、ルールがあまり共有されていないという点が挙げられる。そのような経緯がある中で、『さよならゲーム』が公開された1988年前後には、『エイトメン・アウト』(88)や『フィールド・オブ・ドリームス』(89)、『メジャーリーグ』(89)などが製作され、ハリウッドで「野球映画ブーム」が起こっていた。
『フィールド・オブ・ドリームス』予告
公開当時の劇場パンフレットには、“これから公開されるであろう「エイトメン・アウト」「シューレス・ジョー」に心は弾む”と記されている。どこか「これから野球映画の良作が次々にやってくる」という雰囲気があったのだ。当時のケヴィン・コスナーは『アンタッチャブル』(87)や『追いつめられて』(87)が公開されて、一躍スター俳優として注目されていた時期。『フィールド・オブ・ドリームス』の公開は、『さよならゲーム』後のことだが、野球映画の波はケヴィン・コスナー人気の波と共振していたことを思い出す。
サム・ライミが監督した『ラブ・オブ・ザ・ゲーム』(99)でもケヴィン・コスナーは野球選手を演じているが、彼の野球に対する愛は映画ファンの間でよく知られていた。例えば、『ボディガード』(92)で初来日を果たした際、たまたま日米野球が開催されていた東京ドーム訪問を熱望。過密なスケジュールの中で、帰国直前に大リーガーたちと野球を興じ、そのまま成田空港へ向かったという逸話があったほど。そしてもうひとり、野球に対する深い愛を持った人物が『さよならゲーム』に参加していた。それは、監督のロン・シェルトンだった。