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『さよならゲーム』スタッフ・キャストからレジェンドまで、野球を愛でた人々の野球愛に溢れた映画

(c)Photofest / Getty Images

『さよならゲーム』スタッフ・キャストからレジェンドまで、野球を愛でた人々の野球愛に溢れた映画

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ロン・シェルトン監督はメジャーリーガーを目指していた



 野球殿堂入り第1号選手をトミー・リー・ジョーンズが演じた『タイ・カップ』(94)の監督であり、ケヴィン・コスナーとはゴルフを題材にした『ティン・カップ』(96)でも組んでいるロン・シェルトン監督。彼はマイナーリーグで活躍していたという経歴の持ち主だった。野球の奨学金を得て大学に進学し、ボルチモア・オリオールズからドラフト指名を受けた。AAで投手から二塁手へ転向し、AAAまで進んだものの、メジャーへの昇格は難しく、体力の限界を感じて引退したという経緯がある。その後、大学へ再入学し、デパートで働きながら学費を稼ぎ、脚本を勉強。ニック・ノルティ主演の『アンダー・ファイア』(83)や、ロビン・ウィリアムズ主演の『タッチダウン’90』(86)の脚本で注目されながら、8年ががりで勝ち取った監督デビュー作が『さよならゲーム』だったのだ。つまり、この映画で描かれているマイナーリーグにおける人間模様の数々は、彼が実際に見聞したものが基となっているのである。


 また、『さよならゲーム』には、ケヴィン・コスナー演じる捕手クラッシュとティム・ロビンス演じる投手エビーの間で揺れる、もうひとりのメインキャストがいる。スーザン・サランドン演じるアニーは、<ダーラム・ブルズ>の若手有望選手を“お世話”して、名選手へと成長させることを生き甲斐としている女性。劇中では、ケヴィン・コスナー演じるクラッシュとスーザン・サランドン演じるアニーとが結ばれることになるのだが、現実の世界ではスーザン・サランドンとティム・ロビンスのロマンスが話題となった。ふたりには12歳の歳の差があっただけでなく、既に大スターであったスーザンに対して、当時のティムは青春スターとして脇役のひとりを演じるような俳優に過ぎなかったからだ。



『さよならゲーム』(c)Photofest / Getty Images


 ふたりのパートナー関係は相乗効果をもたらし、その後のキャリアを大きく変えることとなる。例えば1995年には、ティムが監督した『デッドマン・ウォーキング』(95)でスーザンが第68回アカデミー賞主演女優賞を受賞。2003年には、『デッドマン・ウォーキング』でショーン・ペンに第46回ベルリン国際映画祭銀熊賞(男優賞)をもたらしたティムが、今度はショーンと共演した『ミスティック・リバー』(03)で、第76回アカデミー賞の助演男優賞を受賞するという奇遇な巡り合わせがあった(ちなみにショーンも『ミスティック・リバー』で初のアカデミー主演男優賞を受賞している)。つまり、『さよならゲーム』の製作によって生まれた化学反応が、後の作品を生み出す源流にもなっているのである。


 話は逸れるが、野球チーム<ダーラム・ブルズ>は、35歳でメジャーリーガーを目指したジム・モリスの実話を映画化した『オールド・ルーキー』(02)にも登場する。また、『さよならゲーム』公開当時アトランタ・ブレーブス傘下のAAAだった<ダーラム・ブルズ>は、その後タンパベイ・レイズ傘下のAAAとなっている。このタンパベイ・レイズと2012年にマイナー契約したのが松井秀喜。ニューヨーク・ヤンキースからロサンゼルス・エンゼルスを経て、さらにオークランド・アスレチックスとメジャーを渡り歩いて来た松井が、メジャー復帰を挑戦する場として選んだのが<ダーラム・ブルズ>だったのである。当時筆者は、松井秀喜のユニフォーム姿に『さよならゲーム』のケヴィン・コスナーの姿を重ねていた。当時の松井にとって<ダーラム・ブルズ>でプレーすることは不本意だったに違いないのだが、メジャーからやって来たホームランバッターという設定が否応なく想起させたのだった。




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