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『21ブリッジ』チャドウィック・ボーズマンの存在感が光る、秀逸なポリス・スリラー

©️2019 STX Financing, LLC. All Rights Reserved.

『21ブリッジ』チャドウィック・ボーズマンの存在感が光る、秀逸なポリス・スリラー

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70年代の芳香漂う往年のポリス・スリラー



 ある真夜中、ブルックリンの場末のワイナリーで強盗事件が発生した。元軍人の強盗コンビは、そのワイナリーに隠されているコカイン30キログラムを盗みだす手はずになっていた。しかし、実際には、想定していた量の10倍にも及ぶ300キログラムのコカインが保管されており、強盗計画に早くも狂いが生じだす。強盗コンビのひとりのマイケル(ステファン・ジェームズ)は想定外の事態になにか不審な意図を感じ取ったが、その矢先、タイミング悪く警官の集団が店先に現われ、銃撃戦に突入。アンドレ・デイビス刑事(チャドウィック・ボーズマン)が到着したころには、7人の警官が殺害され、50キログラムのコカインが盗まれたあとだった……。


 一夜の出来事を描いた『21ブリッジ』は、1970年代の骨太でスリリングなクライム・サスペンスの伝統を踏襲している作品だ。ウィアム・フリードキンの『フレンチ・コネクション』(71)やシドニー・ルメットの『セルピコ』(73)を彷彿させる往年のポリス・スリラーを描き、懐かしさが漂うストレートな物語を提供してくれている。また100分弱というコンパクトな尺の中に、緊張感を保ち続けたスリリングな展開が凝縮されており、ノンストップで猛進する事件の様相には、最後まで目が離せない。

 

『21ブリッジ』©️2019 STX Financing, LLC. All Rights Reserved.


 事件現場に派遣されたNYPD殺人課のアンドレ・デイビス刑事は、揺るぎない信念のもとで、忠実に生きる男だ。アンドレは13歳のとき、警察官だった父親を殉職で失っている。それでもアンドレは、父の遺伝子を引き継いで、刑事の道を志した。警官殺しの事件には誰よりも熱意を燃やしており、凶悪犯の逮捕のためには手段を問わない。正当な理由がある場合には即座にトリガーを引く人物だ。その容赦ない捜査方法が問題視され、内部調査部に目を付けられることもしばしば。


 善とも悪とも言い切れないアンドレの性格設定は、ドン・シーゲルやアントワーン・フークアの幾つかの作品――『ダーティハリー』(71)のクリント・イーストウッド、『イコライザー』(14)のデンゼル・ワシントンなど――から、その影響の源泉を感じられる。主人公の刑事像も、1970年代風のハードボイルドなタッチを引き継ぎつつ、現代的なアップデートでリアリティを強化しているわけだ。





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