1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. セルピコ
  4. 『セルピコ』シドニー・ルメットとアル・パチーノが描く、法と正義への信頼を取り戻させた骨太警察ドラマ
『セルピコ』シドニー・ルメットとアル・パチーノが描く、法と正義への信頼を取り戻させた骨太警察ドラマ

(c)Photofest / Getty Images

『セルピコ』シドニー・ルメットとアル・パチーノが描く、法と正義への信頼を取り戻させた骨太警察ドラマ

PAGES


index


警察機構を糾弾した実在の警官、フランク・セルピコ



 ‘70年代のアメリカは傷ついていた。べトナム戦争の敗北。オイルショックによるインフレーション。ウォーターゲート事件に端を発する政治不信。世界を牽引していた超大国としての権威は失われ、凋落へと向かっていった。


 誰しもが公的権力への信頼を失っていた時代、ある一人の刑事が公然と警察の汚職を告発する。その男の名前は、フランク・セルピコ。彼はニューヨークの私服警官として働くうちに、仲間が日常的に賄賂・恐喝を行っていることに衝撃を受ける。彼は賄賂を受け取ることを断固拒否し、法の精神に忠実であろうと孤軍奮闘。仲間からのリンチというリスクを顧みず、汚職調査委員会の証言台に立つ。やがてジャーナリストのピーター・マースが、勇気あるセルピコの内部告発を書籍化。「公的権力に身をおきながら、敢然とそれに立ち向かう人間がいたのか」と、多くの人々が彼の行動に称賛を送った。


『セルピコ』予告


 そんなセルピコの英雄的行動を、ビジネス・チャンスと捉えていた男がいた。調査委員会のメンバーだったデヴィッド・ダルク刑事だ。この実話を映画化すれば、カネにもなるし、警察の汚職追求に一役買った自分自身の英雄譚にもなる。当時、ダルク役にはポール・ニューマン、セルピコ役にはロバート・レッドフォードという『明日に向って撃て!』(69)、『スティング』(73)の黄金コンビが考えられていた(最終的にデヴィッド・ダルクはボブ・ブレアに改名され、トニー・ロバーツが演じることになる)。


 セルピコは忸怩たる思いだったろう。命がけの告発すらも、自分以外の刑事の虚栄心を満たす道具にされるのか、と。だがシナリオ開発はうまくいかず、ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、そして監督候補だったサム・ペキンパーもプロジェクトから離脱してしまう。


 だがもう一人、セルピコに並々ならぬ関心を抱いていた男がいた。『戦争と平和』(56)、『テンペスト』(58)、『天地創造』(66)などを手掛けてきたイタリアの大プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスだ。ラウレンティスは、イタリアの映画産業は今後斜陽になると睨んで、イタリアからアメリカに活動の場所を移していた。目利きの彼は、さっそくピーター・マース原作の映画化権を40万ドルで購入する。


 監督の人選やキャスティングなど、実質的なプロデューサーにはマーティン・ブレグマンが名乗りをあげた。元々はマイケル・ダグラス、フェイ・ダナウェイ、バーブラ・ストライサンドらのマネージャーとして辣腕を奮っていた人物だが、本作で初めてプロデューサー業に挑戦。主役のセルピコ役には、自らが見出した俳優アル・パチーノを猛烈プッシュする。





PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
counter
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. セルピコ
  4. 『セルピコ』シドニー・ルメットとアル・パチーノが描く、法と正義への信頼を取り戻させた骨太警察ドラマ