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『21ブリッジ』チャドウィック・ボーズマンの存在感が光る、秀逸なポリス・スリラー

©️2019 STX Financing, LLC. All Rights Reserved.

『21ブリッジ』チャドウィック・ボーズマンの存在感が光る、秀逸なポリス・スリラー

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公権力の人間らしさを描き切った稀有な物語



 アンドレ刑事は、警官殺しの強盗殺人犯を追跡するため、マンハッタン島とほかの陸地とを結ぶ21本の橋と、トンネルなどを封鎖する大胆不敵なロックダウン作戦を提案。マンハッタン全土を封鎖し、犯人の行方を追うのだが、事件の真相に迫る中で、自らも大規模な汚職組織の小さな歯車に過ぎないことがわかってくる。


 米国では、建国以来続く人種差別の問題が現在も根深く残っている。ジョージ・フロイト氏が警察官によって殺され、“Black Lives Matter(BLM, 黒人の命をないがしろにするな)”運動が全米規模に拡大するなど、長年、迫害に苦しんできたアフリカ系住民の蓄積した怒りが一気に噴出した。白人警官による暴行事件が多発している影響で、米国の世論からは警察組織への予算打ち切りや、警察解体などが声高に叫ばれている。

 

『21ブリッジ』©️2019 STX Financing, LLC. All Rights Reserved.


 『ブラック アンド ブルー』(19)のように、米国の司法や警察への不信感を真正面から描き切った作品が増えてきているなか、『21ブリッジ』で描写される警察官は、非常に人間的だ。というより本作には、完全なる善、完全なる悪、という概念が存在しない。冷酷な殺人者も良心の呵責に苛まれ、怯えている人間であることが分かる。どのキャラクターも繊細で、なにかに悩み苦しんでいる。それは主人公も例外ではない。


 この作品のキャラクターは全員が複雑だ。どんな人物でも闇の部分を抱えており、善悪では分けられない複雑な物語を構築している。米国の警察に対してネガティヴな意見が散見される中で、警察官をひとりの人間として描いている『21ブリッジ』は、ある意味では稀有な作品だと言える。道徳的に腐敗した世の中で、自分なりの信念に従うアンドレ刑事の生き様こそ、いま私たちが学ぶべき姿勢なのかもしれない。



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文: Hayato Otsuki

1993年5月生まれ、北海道札幌市出身。ライター、編集者。2016年にライター業をスタートし、現在はコラム、映画評などを様々なメディアに寄稿。作り手のメッセージを俯瞰的に読み取ることで、その作品本来の意図を鋭く分析、解説する。執筆媒体は「THE RIVER」「IGN Japan」「リアルサウンド映画部」など。得意分野はアクション、ファンタジー。



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『21ブリッジ』公開中

配給:ショウゲート

©️2019 STX Financing, LLC. All Rights Reserved.

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