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『RAW~少女のめざめ~』新進気鋭のフランス人女性監督が描く、ホラーを纏った“ジュスティーヌ”の青春

『RAW~少女のめざめ~』新進気鋭のフランス人女性監督が描く、ホラーを纏った“ジュスティーヌ”の青春

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ダークな美しさを湛える異常描写が10代の少女の混乱を純化する



 ただし、『キャリー』の原作者スティーヴン・キングにせよデ・パルマ監督にせよ、また『ウィッチ』のロバート・エガース監督にしても男性という部外者の視点から女性を見ているとも言える。少女の成長=変貌に得体の知れない恐怖を見出すのは、男性側に異性のことは理解できないという限界があるからではないのか?


 だとすれば少女の“性の目ざめ”と身体的な変化をホラーの衣を借りて描く際に、女性の監督が描くことでまた違う景色が見えてくるのではないか。そんな疑問に対して『RAW~少女のめざめ~』はひとつの答えを提示してくれている作品だと言える。


 特に『RAW~』において顕著なのは、全体を通じてほぼジュスティーヌの目線で描かれていること。それゆえに、ジュスティーヌがカニバリズムに覚醒していく姿に対して一切ジャッジすることがないのだ。ジュスティーヌが自分を客観視するための他者の役割を果たすのは、同じ学生寮にいる姉のアレックスなのだが、アレックス自身がジュスティーヌの暴走を後押しし先導しようとするので、事態はエスカレートするばかりなのである。




 ジュスティーヌを取り巻く獣医科大学の描写も強烈だ。新入生を歓迎する伝統として、動物の内臓を生のまま食べさせたり、動物の血液をぶっかけたりするのだ(血まみれの学生たちの姿に『キャリー』を思い出す映画ファンは多いだろし、これまた初潮や性の暗喩だと言い出すとキリがないのでここでは一旦置く)。これも客観的に見れば学生ならではの悪ふざけであり、バカげた伝統行事であるに過ぎないのだが、まだ幼く生真面目で清廉なジュスティーヌにとってはまるで戦場に放り込まれるようなもので、すべてがセルフコントロールを失わせる要因となっていく。


 デュクルノー監督は直接的な描写で押してくるわけではない。むしろ静謐で美しいイメージを積み重ねて、ジュスティーヌの変貌を追いかける。そこに善悪の規範を持ち込まないのが本作の魅力であり、大人めいた常識や規範がまったく入り込まない臨場感が、思春期の少女の混乱とぴったりシンクロするのである。


 もうひとつ付けくわえるなら、ジュスティーヌが本格的に覚醒するキッカケとなるのが姉アレックスの勧めによって行われる“初めてのムダ毛処理”であるというアイデアは、女性監督ならではの、みごとな発想ではないだろうか。そこには色濃く性の匂いが漂っていて、的確なチョイスだと納得させられる。しかし男性には通過儀礼のとしての重みを理解しがたい“初体験”であり、本作がみごとに「女性映画」であることを思い知らされるのだ。



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