2019.04.12
※2019年4月記事掲載時の情報です。
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キューブリックに激賞されたサイコ・サスペンス
俗に「サイコ・サスペンス」と呼ばれる、常軌を逸した人間の凶行を描くジャンルがある。だが登場人物だけでなく、作品そのものが狂っているように感じられる映画が稀に存在する。その度合いがきわめて強いのが、本作『ザ・バニシング -消失-』である。
本作は、スタンリー・キューブリック監督に「これまで観たすべての映画の中で最も恐ろしい映画だ」と激賞されたり、本作のジョルジュ・シュルイツァー監督自身の手によって、ジェフ・ブリッジス、キーファー・サザーランド、サンドラ・ブロック出演作としてハリウッドでリメイクされるなど、世界的に注目を集めた作品ながら、日本で劇場公開されることはなく、この記事を書いている現在、ソフトの販売も終了しており鑑賞困難な作品の一つとなっていた。それが今回、30年以上の時を経て、ついに日本の劇場で公開される。いま、この作品がスクリーンで観ることができるというのは、映画ファンにとっては僥倖といえるだろう。
ここでは、この異常な映画がどう狂っているのかを考えながら、それが示す“真のおそろしさ”とは何なのかについて、できる限り深く考えていきたい。