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画面アスペクト比1.66:1がもたらす心理模様『The Beguiled / ビガイルド 欲望のめざめ』

画面アスペクト比1.66:1がもたらす心理模様『The Beguiled / ビガイルド 欲望のめざめ』


全ての登場人物たちはソフィアの分身でもある



 かつて『ヴァージン・スーサイズ』では、「なぜ少女たちは自ら命を絶ったのか?」という謎を抱える男子たちの目線で物語が綴られた。そして、この『ビガイルド』もまた、後から振り返った時に登場人物の誰もが「なぜこのようなことになってしまったのか、まるでわからない」と述懐するであろう、極めて不可解な事件について描いている。


 とはいえ今回のソフィア・コッポラは、『ヴァージン・スーサイズ』の頃とは違い、ベールに覆われた感情を「謎」のままでは終わらせない。様々な年代の女性たちがあの時、あの場所で何を感じていたのかをじっくりと掘り下げ、観客に伝えようと心を尽くしているように思う。なぜそれが可能となったのか。もちろんソフィア自身の表現者としての成長もあるのだろう。だがそれ以上に、彼女が女性として、ここに集う様々な年頃の女性たちの成長段階を全て自ら経験してきたことが大きいはずだ。


 この学園で暮らす女性たちは一人一人が主人公であり、いわばソフィア自身が心を通わせることのできる分身のような存在でもある。幼い少女は、外からの来訪者というだけで兵士に興味関心を寄せて微笑みかける。少し年長の少女は、自分の親切に対して「ありがとう」と御礼を言ってもらえるだけで嬉しくなり、充足感を満たす。あるいは戦争で失った兄や、離れて暮らす父の姿をダブらせる少女も見受けられるし、年頃の少女や教師たちに至っては、無意識のうちに異性としての目線でこの兵士にささやかな思いを寄せるようになる――――。そこには何ら悪意や邪悪めいたものなど存在しない。にもかかわらず、事件は起こる。このあらゆる感情が入り乱れて結末へと向かっていく流れを、実にわかりやすく、細やかに描いている点こそ、今回のソフィアがもたらした大きな成果だと思うのだ。




 そこには『ヴァージン・スーサイズ』や『マリー・アントワネット』で主演を務めたキルスティン・ダンストや『SOMEWHERE』のエル・ファニングが集結し、かつて実写版「リトル・マーメイド」への出演を噂されたニコール・キッドマンも顔をそろえる。かくもソフィアの世界観を熟知した女優たちが席に着き、かつてと同じように「ソフィアの分身」となって各々の年頃を彩ってみせた本作は、まさに現時点におけるソフィア・コッポラの集大成と呼ぶにふさわしい一作と言える。きっと10年後、20年後、彼女のキャリアを紐解く上で欠かすことのできない重要な位置付けの作品となっているはず。私はそう確信してやまない。



文: 牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンⅡ』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。



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作品情報を見る


「The Beguiled/ビガイルド欲望のめざめ」

2018年2月23日(金)TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国公開

©2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved.


※2018年2月記事掲載時の情報です。

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