1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. 男たちの挽歌
  4. 『男たちの挽歌』男たちの熱い想いが、アクション映画史を変えた!
『男たちの挽歌』男たちの熱い想いが、アクション映画史を変えた!

© 2010 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.

『男たちの挽歌』男たちの熱い想いが、アクション映画史を変えた!

PAGES


物語を盛り上げるジョン・ウー&ツイ・ハークの姿



 そんな胸高まるアクション・シーン、さらには男たちの熱いドラマを盛り上げる音楽についても触れておきたい。テーマ曲などの劇伴は、『ドラゴン怒りの鉄拳』『ドラゴンへの道』などで知られるジョセフ・クーによるものだけに、ブチ上がるのは当然。さらに、レスリー・チャンの歌声がエンドロールを締めくくる、主題歌「當年情」も、クー作曲によるバラードであり、ジェームズ・ウォンが手掛けた映画の内容とリンクする歌詞が泣かせてくれる。


 そして、後半に流れる子供たちの合唱団が歌う「明天會更好」。もともとは“台湾版「ウィー・アー・ザ・ワールド」”として発表され、台湾を代表するミュージシャンたちによって歌われた楽曲だが、英語タイトルは「Tomorrow will be Better」。つまり、本作の英語タイトル「A Better Tomorrow」の基になっているのである。

 

『男たちの挽歌』© 2010 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.


 音楽繋がりでいえば、キットの婚約者・ジャッキー(エミリー・チュウ)の、オーディションシーンに登場する審査員として、オーバーリアクションでベタな笑いを取るツイ・ハークの姿にも注目したいところ。当のジョン・ウーも、出所後のホーを見守る台湾警察の警部役として出演しているが、これは「67年版オリジナル」でロン・ゴン監督が演じている役柄と同じ。そんなところにも、作り手のただならぬこだわりを感じるだろう。


 さまざまな奇跡が重なり、完成した『男たちの挽歌』は、その後、2本の続編を生み出し、世界のアクション映画史を変えた。韓国版リメイク『男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW』(10)だけでなく、チョウ・ユンファが偽札製造チームのリーダーを演じた『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』(18)など、数々のフォロワー作を生み出したのは言うまでもない。


 じつは検閲の規制が厳しい中国大陸においても人気が高く、18年には『男たちの挽歌 REBORN』としてリメイク。ただし、ラストに関しては大きく改変された。国家安全維持法に基づき、このまま香港政府が映画の検閲を強化していけば、黒社会の人物を、“英雄”として描くことは不可能になる。果たして映画界は、香港社会における、ひとつの文化になった“英雄片”を、守り切るができるのだろうか?



文:くれい響

1971年、東京都出身。大学在学中、クイズ番組「カルトQ」(B級映画)で優勝。その後、バラエティ番組制作、洋泉社「映画秘宝」編集部員を経て、フリーとなる。現在は映画評論家として、映画誌・情報誌・ウェブ、劇場プログラムなどに寄稿。また、ライターとしても多岐に渡って活動しており、香港の地元紙「香港ポスト」では20年以上に渡って、カルチャー・コラムを連載中。



今すぐ観る


作品情報を見る





『男たちの挽歌』

発売元:ツイン 販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

© 2010 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.

PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. 男たちの挽歌
  4. 『男たちの挽歌』男たちの熱い想いが、アクション映画史を変えた!