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『男たちの挽歌』男たちの熱い想いが、アクション映画史を変えた!

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『男たちの挽歌』男たちの熱い想いが、アクション映画史を変えた!

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意外すぎるチョウ・ユンファのキャスティング



 そのリメイクを企画したのが、“香港ヌーヴェルバーグ”の一人であり、新興の映画会社シネマシティ・カンパニーで『皇帝密使』(84)などのヒット作を送り出していたツイ・ハーク監督である。そして、彼が白羽の矢を立てたのが、ジョン・ウー監督と主人公ホーを演じるティ・ロンである。


 ウーは所属していた老舗の映画会社ゴールデン・ハーベスト社で撮った『ソルジャー・ドッグス』(83)における過激な作風が問題になり、作品はお蔵入り。自身も台湾に左遷させられていた。一方、人気時代劇スターだったティ・ロンも。長年所属していたショウ・ブラザース社から解雇されていた。そこでハークが、盟友のウーと憧れの存在だったロンに、「もう一度、香港映画を作ろう」と声を掛けたのだ。このエピソードは、時代の流れもあり、窮地に立たされた劇中のホーとマークの姿に重なるのである。

 

『男たちの挽歌』© 2010 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.


 その後、ホーの弟・キット役にはアイドル歌手としては絶大な人気を誇りながらも、俳優としては発展途上だったレスリー・チャンが決定。そんななか、「67年版オリジナル」には登場していないキャラ、ホーの相棒役のキャスティングに関しては、かなり難航した。当初、人気歌手ジョージ・ラムにオファーされたこの役は、その後、新人俳優マーク・チェンが候補に挙がったことで、マークというキャラ名が残ることに。そして、視聴率60%以上という国民的ドラマ「上海灘」で主演を張りながら、出演映画は軒並み不入りということから、「票房毒薬(興収の毒薬)」とまで言われたチョウ・ユンファに決定する。


 当初は扱いが小さかったマークだが、「木枯し紋次郎」における楊枝ばりにマッチ棒をくわえたユンファの圧倒的な存在感から徐々に出演シーンが増し、最終的にホー、キットに並ぶ3人目の主人公にまでなった。今となっては考えられないエピソードである。


 そんなマークが、組織に裏切られたホーの復讐のため、台湾の料亭「楓林閣」に単身で乗り込むシークエンスなどは、深作欣二やサム・ペキンパー、セルジオ・レオーネなどの先輩監督をリスペクトするジョン・ウー監督の、激しくも美しいバイオレンス描写が魅力的だ。


 当時の香港映画界においては、実銃の使用規制が緩和されていたこともあり、モデルガンから実銃ベースのプロップガンが使用された。そのため、ロングコートをはためかせたユンファが魅せる二挺拳銃スタイルやスローモーションの銃撃戦などが、よりリアルに見えるのも特徴的だといえるだろう。





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