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『ウォーターワールド』ハリウッド映画の鬼門“水”に、誰もが“失敗作”と覚悟した海洋大作

(c)Photofest / Getty Images

『ウォーターワールド』ハリウッド映画の鬼門“水”に、誰もが“失敗作”と覚悟した海洋大作

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『ウォーターワールド』が抱えた不運とトラブル



 『ウォーターワールド』の撮影は、「Making of WATERWORLD」という1冊の書籍になるほど、ありとあらゆるトラブルに満ちていた。その例をいくつか挙げるなら、まずは天候を理由とするものがある。


 自然はコントロールできない。つまり、“海”の天候や波の状態は不安定なのだ。映画は撮影の準備に時間がかかるため、撮影が始まる頃には海上のセットに到着したころとは“海”の状況が激変。6時間もかけて撮影現場まで移動したにも関わらず、何度も撮影が中止になってしまったのだ。さらに、俳優もスタッフもずっと海上にいるため、船酔いによって健康状態がすぐれないという始末。最大の不運は、ハリケーンによる海上セットの崩壊。数百万ドルの損害が出ただけでなく、セットを作り直す必要も生じ、当然、撮影はストップ。撮影を継続するため、プロデューサーでもあるコスナーは2,000万ドルもの自費を投入することになってしまう。


『ウォーターワールド』(C) 1995 UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.


 ケヴィン・コスナーの不運はそれだけでない。撮影中に不倫騒動が起こり、糟糠の妻と離婚。日本円に換算すると100億円もの慰謝料を支払うこととなったのである(フォーブス誌によると、当時の歴代5位となる高額離婚慰謝料)。さらには、盟友であったはずのケヴィン・レイノルズ監督と演出を巡って対立。そもそも『ロビン・フッド』の現場で意見の対立があったため、レイノルズは「コスナーは彼が監督する作品にのみ出演すべき」と『ウォーターワールド』への参加に難色を示していたという経緯もある。結果、本編中にはプロジェクトを離れたレイノルズに代わって、コスナーが演出した場面があるとも言われている。


 スティーヴン・スピルバーグは『ジョーズ』における自身の経験をもとに、「オープンウォーターでの撮影はやめたほうがいい」と“ふたりのケヴィン”にアドバイスしていたことも、後年になって判明。決別したふたりは、『ハットフィールド&マッコイ』(12)で監督・主演として再び組むまでの17年間、不仲になってしまったのである。


 その他にも、海上のセットには機材置き場がない、艀のトイレを使用するため用をたす毎に撮影が止まる(映り込まない位置まで移動させなければならない故)、撮影中に船体が沈んでジーン・トリプルホーンとティナ・マジョリーナが危うく溺れかける、スタントコーディネーターのノーマン・ハウエルが水中撮影で減圧症に襲われ、ヘリコプターを要請してホノルルの病院へ運ばれる、さらには、後退した生え際をコスナーがCG処理させようとした、などという怪聞まで広がるなど、『ウォーターワールド』におけるトラブルの事例は、枚挙にいとまがない。



『ウォーターワールド』(C) 1995 UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.


 それでも『ウォーターワールド』には、地球温暖化をテーマにしたという先見性を指摘できる。現実に起こっているその危機は、公開当時よりも現代の方が実感しやすいはずだ。また、公開直後からユニバーサル・スタジオ・ハリウッドのアトラクションとして登場。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでも2001年の開業と同時に人気を呼び、作品に対する一般的な評価は若干良くなった感がある。


 一方、興行的な大赤字が予想されたものの、最終的には全世界で2億6,400万ドルを稼ぎ、テレビの放映権やビデオの売り上げを加えることで多少の利益を上げるに至っている。日本語には「水物」という言葉があるが、映画製作における“水”は、その時の条件によって変わりやすく、やはり不運を導く鬼門のモチーフなのである。



【出典】

・『ウォーターワールド』劇場パンフレット

・「Making of WATERWORLD」 Janine Pourroy・著

・「Berton Pierce’s Scene of Scale A Documentary Film of Industry Model Making」

DVD

・「THE ODYSSEY OF WATERWORLD」

(「WATERWORLD」Blu-ray ARROW VIDEO版に収録)

・IMDb 『WATERWORLD

・BOX OFFICE MOJO 『CUTTHROAT ISLAND』 『ABYS

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文:松崎健夫

映画評論家。東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻修了。テレビ・映画の撮影現場を経て、映画専門の執筆業に転向。『ぷらすと』『japanぐる~ヴ』などテレビ・ラジオ・ネット配信番組に出演中。『キネマ旬報』、『ELLE』、映画の劇場用パンフレットなどに多数寄稿。現在、キネマ旬報ベスト・テン選考委員、ELLEシネマ大賞、田辺・弁慶映画祭、京都国際映画祭クリエイターズ・ファクトリー部門の審査員を務めている。共著『現代映画用語事典』(キネマ旬報社)ほか。



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『ウォーターワールド』

Blu-ray: 2,075円 (税込)  /  DVD: 1,572円 (税込)

発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント

(C) 1995 UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.

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