『ウォーターワールド』あらすじ
何世紀にもわたる環境破壊の末、地球が海で覆われた未来世界。人類はアトールと呼ばれる浮遊都市の上で生き延びようと必死だった。しかし、人々の中には、神話のように語り継がれてきた伝説の陸地ドライランドが存在すると信じる者がいた。凶悪な海賊集団スモーカーズのリーダー、ディーコン(デニス・ホッパー)もその伝説を信じる一人で、背中に地図が彫られた謎の少女エノーラ(ティナ・マジョリーノ)をつけ狙う。エノーラの背中の地図はドライランドへたどり着くための唯一の手がかりなのだ。ある日、一匹狼の男マリナー(ケビン・コスナー)が、エノーラと養母のヘレン(ジーン・トリプルホーン)の住むアトールにやって来た。そして3人は想像を絶する恐るべき戦いの渦中に巻き込まれてしまう…。
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ハリウッド映画の鬼門“水”
ハリウッド映画にとって“水”は鬼門なのである。それは、過去の事例が物語ってきたものだ。例えば、巨大な港のセットを組んだ『ポパイ』(80)や、嵐の中の大波がクライマックスとなる『ハリケーン』(79)。作品の評価はともかく、巨大な製作費を回収できなかったことから、公開当時これらの作品は“失敗作”と見なされていた(現在は再評価の向きもある)。
その極め付けが、海洋アドベンチャー超大作として公開された『カットスロート・アイランド』(95)。1億5,000万ドルかかったと言われる製作・宣伝費(うち製作費は9,800万ドル)に対して、北米で1,000万ドルしか興行収入を上げられなかったことから、回収率の低さを根拠に<最も興行的な赤字が大きかった映画>とギネスブックに記録されたほどの“失敗作”だった。
一方、興行的な成功を収めた作品においても、“水”が鬼門とされたという前例もある。例えば、“海”を舞台にした『ジョーズ』(75)や『タイタニック』(97)。スティーヴン・スピルバーグ監督は、実際に海で撮影することにこだわり、その結果、ロボット製のサメが塩水によって故障。製作費も撮影日も予定を遥かにオーバーすることとなってしまった。
また、ジェームズ・キャメロンが監督した『タイタニック』の場合は、完成した作品をまだ誰も観ていなかったにも関わらず、「“海”を舞台にした映画は当たらない」というジンクスを理由に、公開前から“失敗作”になるという心無い否定的な報道ばかりなされていたという経緯がある。無論、キャメロンのケースは、深海を舞台にした『アビス』(89)の興行的失敗も影響していた(約7,000万ドルの製作費に対して、北米で約5,400万ドルしか稼げなかった)。
『ウォーターワールド』予告
地表が“海”で覆われた近未来の地球で、伝説の陸地・ドライランドの位置を記した地図をめぐる冒険を描いた、ケヴィン・コスナー主演の『ウォーターワールド』(95)もまた、当初の製作費を大幅にオーバーし、公開前から“失敗作”と不安視されていた作品だった。
物語に設定された世界を実現させるため、まず必要となったのは陸が見えないくらい離れた外洋での撮影。『ウォーターワールド』が公開されたのは、CG表現に革命を起こした『ジュラシック・パーク』(93)と『タイタニック』のちょうど中間点に位置する時期。映像を見れば判ることだが、現在の感覚であればCGで表現すれば済むような場面も、この映画では実際の“水”を使って撮影され、多くの場面が本物の海上で撮影されている。