(C)2002 Media Asia Films(BVI)Ltd. All Rights Reserved.
『インファナル・アフェア』往年の香港映画の魂と熱量を取り戻した、歴史的傑作 ※注!ネタバレ含みます。
2021.08.02
香港オールスターのキャスト&スタッフ
香港映画の魂と熱量を取り戻すために、もっとも必要としたのは、まさにオールスターともいえるキャスティングの豪華さである。TV局の俳優養成所の先輩・後輩の関係であり、『インファナル・デイズ 逆転人生』(91)以来、約10年ぶりの競演となったトニーとアンディをはじめ、アンソニー・ウォン、エリック・ツァンといった“香港アカデミー賞”こと香港電影金像奨で主演男優賞を受賞経験がある“四大影帝”の競演が実現。
さらに、彼らを見守る女性キャラとして、女優としても活躍するトップ・ミュージシャンである、サミー・チェンとケリー・チャンが共演。しかも、当時の香港で人気急上昇だった台湾の歌姫エルバ・シャオを、たった1シーンのために、ヤンの元恋人役にキャスティングすることにも成功した。(ちなみに、米版DVDのジャケットは、銃を構えた彼女のアイコラである)。
『インファナルアフェア』(C)2002 Media Asia Films(BVI)Ltd. All Rights Reserved.
そして、その豪華キャストを調理するスタッフにも、ウォン・カーウァイ監督作『恋する惑星』(94)の撮影で注目を浴びたアンドリュー・ラウ監督ら、一流のメンツが集められた。ラウ監督は過去に『欲望の街/古惑仔』シリーズ(95〜00)や、千葉真一も出演した『風雲/ストーム・ライダース』(98)といった、人気コミックの映画化を成功させており、キャラ立ちの巧さには定評があった人物である。
また、視覚効果顧問には“ウォン・カーウァイの眼”として知られるカメラマン、クリストファー・ドイルを起用。かなり入り組んだ話だけに、黒社会サイドは黄緑を基調としたトーン、警察サイドはブルーを基調にしたトーンにして、観客を混乱させない配慮を行っている。
武術指導には、日本人に懐かしい人気ドラマ「ザ・ハングマン」のドラゴン役で知られるディオン・ラムを迎えたことにも注目したい。ユエン・ウーピンの愛弟子として『マトリックス』シリーズ(99〜03)のアクション指導にも参加していた彼は、劇中でもヒゲ面の悪人・デルピエロ役を好演。本作後にも、『スパイダーマン2』(04)のほか、『DOOM ドゥーム』(05)、『LOOPER ルーパー』(12)などにも招聘されるなど、ハリウッドでも引っ張りダコの存在となった(そんなこともあり、本作の米版ブルーレイのジャケットは、彼が前面に出ている)。
さらに、主人公2人の少年時代を演じる俳優を選出する、新人オーディションを大規模に開催(結果としては、すでにキャリアがあるエディソン・チャンとショーン・ユーが抜擢)。また、トニーとアンディによる主題歌デュエットなど、公開の1年以上前から直前まで情報を小出しにしながら、徹底した宣伝活動を展開した。さんざん煽った後、『インファナル・アフェア』は、2002年最大のブロックバスター作品として、クリスマス・シーズンに公開された。