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サイバーSFの革命児『マトリックス』の先進的視覚スタイルを回想する

(c)Photofest / Getty Images

サイバーSFの革命児『マトリックス』の先進的視覚スタイルを回想する

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コミック作家としての感性に裏打ちされた映像美



 同時にスローモーションはコミックスの常套でもあり、ワンショットが長時間で展開されるのは、決めカットを固定するコミックスのコマを彷彿とさせるものだ。


 事実、『マトリックス』におけるショット単位での均整のとれた構図、あるいはコンセプトを合理的に視覚化した決めカットの連続は ウォシャウスキーズのコミックアーティストという前歴に依拠するものだろう。二人のこうした持ち味は、長編デビュー作『バウンド』(96)で撮影監督が低予算に対応できずに降板し、後任のビル・ポープが低予算をカメラワークでカバーする舵取りをしたことから引き出された。



『マトリックス』(c)Photofest / Getty Images


 ポープのサポートは『マトリックス』においても継受され、たとえば同作のグリーンを基調とする映像のトーンも、ウォシャウスキーズのオーダーから導き出した彼のアプローチである。シリーズを象徴するこのグリーンは、青みがかった現実世界のパートよりも観客を不安にさせ、デジタルの感覚を呼び起こすように設計されているものだと氏は述懐する。またサイバースペースに対する現実空間での描写は、室内や地下鉄といった仕切られた空間を意図的に強調することで、抑圧された人類の立場を演出している。そんな細かな部分にも、三者の絵作りに対するこだわりとセンスが行き届いているのだ。




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