2022.02.26
コロナ禍に翻弄され、辿り着いた公開時期
俳優は反体制であるべきだと語るジム・ブロードベントが醸し出す人間味、イギリス映画の伝統と脚本に忍ばせたジョーク、そして、どんな時代にも尊ばれるべきイギリス人気質。これら全てを束ねたような『ゴヤの名画と優しい泥棒』は、ロジャー・ミッシェルの最高傑作として世に放たれるはずだった。
世界的なパンデミックと悪天候を押して開催された2020年9月のベネチア国際映画祭のレッドカーペット上には、仲良く登壇するミッシェルとブロードベントの姿があった。雨のベネチアでボロボロになったブロードベントは、それでも「来てよかった」とミッシェルに告げたのを覚えているという。
『ゴヤの名画と優しい泥棒』©PATHE PRODUCTIONS LIMITED 2020
しかし映画は、ミッシェルの代表作でありながら、死後の名作として記録されることとなる。本来ならば、2020年の秋に公開され、同年の英国アカデミー賞やアカデミーの候補になるべき作品が。
重要なのは公開のタイミングではない。大事なのは作品だ。1960年代の階級闘争を描いた映画が、不運にも公開が延期されたことによって、弱者救済、高齢者保護という、今の世界が置き去りにしている問題をより強く炙り出すことになったのだから。
参考資料:
アパレル業界から映画ライターに転身。映画com、ぴあ、J.COMマガジン、Tokyo Walker、Yahoo!ニュース個人"清藤秀人のシネマジム"等に定期的にレビューを執筆。著書にファッションの知識を生かした「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社刊)等。現在、BS10 スターチャンネルの映画情報番組「映画をもっと。」で解説を担当。
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『ゴヤの名画と優しい泥棒』
2022年2月25日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©PATHE PRODUCTIONS LIMITED 2020