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 『マイ・ビューティフル・ランドレット』80年代のロンドンに映っていた、来るべき現代世界の諸問題

『マイ・ビューティフル・ランドレット』80年代のロンドンに映っていた、来るべき現代世界の諸問題

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80年代、東京のミニシアターで新鮮な印象を残す



 記憶の向こう側にあった鮮烈な映画体験が、まざまざとよみがえってくる――。ある世代にとっては、そんな思いを引き起こす作品ではないだろうか。『マイ・ビューティフル・ランドレット』、東京での公開は1987年。当時、ミニシアターの先駆的な劇場として知られた歌舞伎町のシネマスクエアとうきゅうで封切られた。


 今でこそ、映画史に残る名優となった『ファントム・スレッド』(17)のダニエル・デイ=ルイスが出演しているが、当時はまったく無名の新人。監督のスティーヴン・フリアーズも、後に『危険な関係』(88)を撮り、ハリウッド映画界でも活躍するようになったが、同じく無名。また、作家や戯曲家としても評価を得る脚本家のハニフ・クレイシも日本では初紹介。興行的な価値は、当時、ほとんど未知数だったこの映画を日本に紹介したのは、いまはなき松竹富士という洋画の配給会社だった(いい映画を入れていた)。


 当時、何の予備知識もなく見たが、なんとも不思議な力を持っていて、いつのまにか、その世界観にひきこまれた。さらにダニエル・デイ=ルイスとの衝撃の出会い……。カメレオン男優といわれる彼の原点となった作品だ。



 舞台は80年代のサウスロンドン。パキスタン系の青年、オマール(ゴードン・ワーネック)は裕福な事業家の叔父が経営するコインランドリーを任され、幼なじみの白人のパンク青年、ジョニー(ダニエル・デイ=ルイス)を引き入れ、店の改造に乗り出す。オマールの父親は実力あるジャーナリストだったが、今は病で倒れ、息子が面倒をみている。父は息子が大学に進学することを望んでいるが、叔父は彼を事業家にしたいと考えている。オマールとジョニーは人種の壁がありながらも、友情以上の感情を抱いているが、やがて、ふたりに転機が訪れる。


 ロンドンの下町に住む青年たちの青春映画で、移民や経済の問題、同性愛の絆が描かれる。LGBTの先駆的な作品でもあった。人生の厳しい部分を見せながら、どこか軽妙なユーモアやファンタジー的な要素もあって、「こんな映画、見たことがない」と当時は思ったものだ。英国では権威ある「イヴニング・スタンダード」賞の最優秀英国映画に選ばれ、アメリカのニューヨーク批評家協会賞や全米批評家協会賞の脚本賞も受賞。アカデミー賞の同部門にもノミネートされている。


 スティーヴン・フリアーズは、その後、『グリフターズ』(90)、『クイーン』(06)で2回、アカデミー監督賞候補となり、英国を代表する名監督となる。一方、ダニエル・デイ・ルイスは『マイ・レフト・フット』(89)『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(07)、『リンカーン』(12)でアカデミー主演男優賞を3度受賞するという前人未踏の偉業を残すことになる。


 ちなみに製作会社はティム・ビーヴァン率いるワーキング・タイトル。ヒュー・グラント主演の『フォー・ウェディング』(94)以降、英国を代表するエンタテインメント系映画の会社としてさらに大きな成功を収めるが、この映画はその初期のヒット作の一本となっている。


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