『パイレーツ・ロック』あらすじ
1966年、イギリス国内のラジオ局は公共放送のBBCのみで、民放放送局はまだ存在しなかった。ロックやポップスが隆盛した時代ではあるものの、BBCラジオがそれらの音楽をオンエアするのは一日あたりおよそ45分以下。そんな時代に海の上から24時間ロックをかける海賊ラジオ局が現れて……。
Index
- 英国を代表する珠玉のコメディの作り手
- 60年代の史実をフィクションへ
- 出待ちするほどだったビートルズ愛
- 本作に込められたビートルズへの想い
- 削除シーンに込められた”アビイ・ロード”
- カーティスへと受け継がれしスピリット
英国を代表する珠玉のコメディの作り手
魅力あふれる人材を次々と輩出する英国映画界において、リチャード・カーティスほどの知名度、巧さ、語り口、人気、その全てを兼ね備えたクリエイターはそうそういない。彼の作品に触れるとなぜだか人間という存在が愛おしく思え、気心しれた家族や友人たちに会いたくなり、日常のささやかな出来事や幸福をじっくりと噛みしめたくなる。そして何よりも英国という国を訪れたくなる。一度ならず、二度三度、いや何度でも。
カーティスのことを英国文化の広報大使と呼ぶのは多少語弊があるかもしれないが、少なくともこの国のいちばん明るくてポジティヴなところをウィットとユーモアで包み、観客の元へ届けてきた功績は手放しで称賛すべきだろう。
『パイレーツ・ロック』予告
90年代には『フォー・ウェディング』(94)や『ノッティングヒルの恋人』(99)で人気を博し、さらに00年代に入ると『ラブ・アクチュアリー』(03)から『アバウト・タイム』(13)に至るまで3本の監督作も世に送り出してきたカーティス。そのちょうど真ん中に位置する監督2作目『パイレーツ・ロック』(09)は、彼のインスピレーションの源泉でもある「音楽」という要素をこれまで以上にダイレクトに取り上げ、なおかつ監督作の中で唯一「過ぎ去りし時代」に焦点を当てた作品だ。