60年代の史実をフィクションへ
物語の舞台となるのは1966年。その頃イギリス国内のラジオ局は、公共放送のBBCのみで、民放放送局はまだ存在しなかった。
ザ・ビートルズやローリング・ストーンズ、ザ・フー、キンクス、ビーチボーイズをはじめとするロックやポップスが隆盛した時代ではあるものの、作品冒頭のイントロダクションによると、BBCラジオがそれらの音楽をオンエアするのは一日あたりおよそ45分以下だったとか。
『パイレーツ・ロック』(C) 2009 Universal Pictures and Medienproduktion Prometheus Filmgesellschaft mbH & Co. KG. All Rights Reserved.
今と違って音楽を聴く手段が限られていた状況下において、これでは若者たちの不満が噴出するのも当然。「もっとロックを!もっとポップスを!」そんな心の叫びに応えたのが、グレート・ブリテン島周辺を漂う船を拠点にして送信されるラジオ放送だった。世に言う、海賊放送である。
本国の法が及ばぬエリアゆえ、海賊放送では自分たちのかけたいジャンルの音楽を思うままにオンエアでき、音楽に飢えた本土の若者たちは瞬く間にこの虜となった。まさに主流に対する反乱。体制に対するアンチテーゼ。その存在こそがロックンロール。こういった海上に浮かぶ放送局が60年代にはいくつも存在したそうだ。