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『ブラス!』ピート・ポスルスウェイトの歴史的な名演が現代に訴えかけてくるもの

(c)Photofest / Getty Images

『ブラス!』ピート・ポスルスウェイトの歴史的な名演が現代に訴えかけてくるもの

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『ブラス!』あらすじ

1990年代のイギリスの炭坑町グリムリー。炭坑夫達で編成された伝統あるバンド「グリムリー・コリアリー・バンド」のメンバーたちは、炭坑の閉鎖騒ぎで気が気ではなく、全英ブラスバンド選手権に備えた練習も手に付かなかった。炭坑存続か閉鎖かで揺れる中、彼らは街と自分たちの誇りを賭けて選手権に出場し、決勝大会が開催されるロイヤル・アルバートホールを目指す。


Index


ミニシアターを通じて触れた名優の記憶



 私が一人暮らしをはじめた1996年の東京は、ちょうどミニシアター人気の絶頂期だった。初めてのGW中、私は満席の銀座テアトル西友で『ユージュアル・サスペクツ』(95)を観た。その年の終わりには、これまた1時間半ほど並んだシネマライズで『トレインスポッティング』(96)を観た。それで翌年になると、各々の作品で”ミスター・コバヤシ”と”レントン”を演じた二人が共演する話題作『ブラス!』が本国から1年遅れて封切りを迎え、有楽町にあったシネ・ラ・セットという小さな劇場が満席の熱気に包まれる中でこれを観たのを今もありありと覚えている。


 本作の感動は計り知れない。正直いって打ちのめされた。とりわけ私の心を支配したのは、この一目見たら忘れることのできない面長の男。ピート・ポスルスウェイトだ。ブラスバンドのリーダー役を務める彼が威風堂々とタクトを振る姿には、見ているだけでこちらの背筋がピンと伸びそうな緊張感と溢れんばかりの人間くささがあった。


『ブラス!』予告


 名優ポスルスウェイトが天に召されてから今年でちょうど10年。気がつくと東京のミニシアターもずいぶん数が少なくなったが、かつてテアトル銀座やシネ・ラ・セットがあった辺りを歩くとつい思い出が溢れ、ミスター・コバヤシのミステリアスな声の響きや、ブラスバンドを率いるダニーの一喝が耳元に蘇ってきそうな気になる。その意味ではポスルスウェイトは今なお私たちの心の中で生き続けているのかもしれない。




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