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『ブラス!』ピート・ポスルスウェイトの歴史的な名演が現代に訴えかけてくるもの

(c)Photofest / Getty Images

『ブラス!』ピート・ポスルスウェイトの歴史的な名演が現代に訴えかけてくるもの

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ひとつの産業の崩壊が街に与える影響



 ご存知のように、イギリス映画ではよく80年代の炭鉱ストライキが描かれる。サッチャー政権が多くの炭鉱を閉山へと追い込んだことによって当時のイギリスは大きく揺れた。そういったドラスティックな改革があったからこそ経済を立て直すことができたという主張がある一方、政府は人々の尊厳まで葬り去ってしまったという批判も根強い。


 大ヒットした『リトルダンサー』(00)の背景となるのはまさにこの84年から85年にかけての最も衝突が激しかった時代だ。では『ブラス!』はどうかというと、それから10年ほど経った'92年が舞台。人々は抗議すること、闘うことにすっかり疲れ果てているようにも見える。


『リトルダンサー』予告


 この問題を80年代からずっと見つめてきたマーク・ハーマン監督は、いつかこれを題材に映画を作りたいと考えていた。しかしどんな切り口で迫ればいいのだろう。アイディアは浮かんでも「これだ!」という決定打に欠けていた。そんなある日、彼の目に飛び込んできたのが、イギリス北東部で活動するグライムソープ・コリアリー・バンドにまつわる新聞記事だった。


 炭鉱閉鎖の憂き目に遭いながらもロイヤル・アルバート・ホールで開催された全英選手権にて優勝を果たした彼ら。それほど高評価を受けながらも、バンドは解散の危機に直面しているという。このニュースに触れ、ハーマン監督は「一つの産業の崩壊がコミュニティにどんな影響を与えるのか」という切り口でこの問題を描いてみようと心に決めたそうだ。



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