2022.02.26
『ゴヤの名画と優しい泥棒』あらすじ
世界中から年間600万人以上が来訪・2300点以上の貴重なコレクションを揃えるロンドン・ナショナル・ギャラリー。1961年、“世界屈指の美の殿堂”から、ゴヤの名画「ウェリントン公爵」が盗まれた。この前代未聞の大事件の犯人は、60歳のタクシー運転手ケンプトン・バントン。孤独な高齢者が、TVに社会との繋がりを求めていた時代。彼らの生活を少しでも楽にしようと、盗んだ絵画の身代金で公共放送(BBC)の受信料を肩代わりしようと企てたのだ。しかし、事件にはもう一つの隠された真相が・・・。当時、イギリス中の人々を感動の渦に巻き込んだケンプトン・バントンの“優しい嘘”とは_!?
Index
ジム・ブロードベントとロジャー・ミッシェル
去る2022年2月中旬の小雨の降る午後、ジム・ブロードベントは主演映画『ゴヤの名画と優しい泥棒』のキャンペーンを締めくくるため、ロンドンのホテルでメディアの質問に応えていた。彼にとってそれはあまり楽しい仕事ではなかったが、いつもより少し感情的になっていたという。作品完成後、惜しくもこの世を去った監督のロジャー・ミッシェルが、いかに素晴らしい監督で、かつ素晴らしい人物だったかを語るべき最後の機会だったからだ。
『ゴヤの名画と優しい泥棒』©PATHE PRODUCTIONS LIMITED 2020
ミッシェルが65歳の若さで急死したのは2021年9月22日のこと。心臓発作だった。ブロートベントがミッシェルと出会ったのは、『ウィークエンドはパリで』(13)。2人はロンドン北部で隣人同士だったこともあり意気投合。ブロードベントはミッシェルについて「想像力に富み、寛大で、エゴが全くない人」と賛辞を惜しまなかった。
そんな間柄にある監督からの約10年ぶりの再オファー、ブロードベントが断るはずがない。彼の手元に届いた本作の脚本には、階級闘争を描いたコメディとしての魅力のほかに、行間から漂うイギリス人の優しさとペーソス、そしてユーモアのセンスがしっかりと描かれていた。