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『すてきな片想い』ジョン・ヒューズの才能が萌芽する監督デビュー作

(c)Photofest / Getty Images

『すてきな片想い』ジョン・ヒューズの才能が萌芽する監督デビュー作

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垣間見られる、才能の萌芽



 当時のジョン・ヒューズは、脚本家として『ホリデーロード4000キロ』(83)や『ミスター・マム』(83)などのコメディ映画を手がけていた時期。モリー・リングウォルドの方は、ポール・マザースキー監督の『テンペスト』(82)で映画デビューを果たし、ゴールデングローブ賞では新人賞の候補となっていた。5歳の時に舞台「不思議の国のアリス」でデビューしたモリーだったが、子役としてのキャリアは必ずしも順風満帆というわけではなかった。例えば、シットコム「THE FACTS OF LIFE」(79〜88)では、メインキャストのひとりに抜擢されながらも、ワンシーズンで降板となってしまった苦い経験がある。


 『テンペスト』でモリー・リングウォルドの演技を見たジョン・ヒューズは、彼女と『ホリデーロード4000キロ』に出演していたアンソニー・マイケル・ホールを当て書きにしながら、『すてきな片想い』の脚本を執筆。映画が全米で公開される頃、モリーとアンソニーは、まさに16歳を迎えることになっていた。


 結婚式の混乱で家族が主人公・サマンサの誕生日を忘れているという『すてきな片想い』の物語構造は、飛行機に乗り遅れそうになった混乱で息子・ケビンの存在を失念する『ホームアローン』(90)の物語構造と近似していることを窺わせる。それもそのはず、『ホーム・アローン』の脚本は、ジョン・ヒューズによるものだからだ。



『すてきな片想い』(c)Photofest / Getty Images


 また結婚式の場面には、『ブルース・ブラザース』(80)を大ヒットさせながらも、1982年に急逝したジョン・ベルーシの実母・アグネスが参列者のひとりとして出演。先述の『ホリデーロード4000キロ』を監督したハロルド・ライミスは、『ゴーストバスターズ』(84)などに俳優として出演しつつ、ベルーシの出世作『アニマル・ハウス』(78)で脚本を手がけるなど、<シカゴ人脈>と呼ばれるコメディアンたちの系譜を導く重要人物のひとり。そんな繋がりから、弟のジェームズ・ベルーシはジョン・ヒューズ最後の監督作『カーリー・スー』(91)に出演することになる縁もある。


 サマンサが夢中になる上級生ジェイク役はマイケル・シューフリングが演じているが、当初は(まだ無名時代の)ヴィゴ・モーテンセンが演じることになっていたという逸話がある。この映画には『クレイマー、クレイマー』(79)の名子役ぶりでアカデミー助演男優賞候補にもなったジャスティン・ヘンリーや、ジョーン・キューザックとジョン・キューザック姉弟も脇役として出演。後に多くの若手俳優を輩出してゆくことになる、ジョン・ヒューズ監督の審美眼の萌芽も見出すことができる。そして、ジョン・ヒューズ、モリー・リングウォルド、アンソニー・マイケル・ホールの3人は、『すてきな片想い』の成功によって、次作となる『ブレックファスト・クラブ』(85)でも組むこととなるのだった。




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