『クラム』あらすじ
ロバート・クラムは、アメリカのアンダーグラウンド・コミックを代表する漫画家、イラストレーター。本作は、風刺に富み、過激で辛辣、ときに性的なオブセッションをあらわにしたコミックを描き続けたクラムにカメラを向けたドキュメンタリー映画である。
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「描いてないと気が変になる」
アメリカン・コミックスの変革者、ロバート・クラム。彼の半生を描いた映画『クラム』はシンプルにして深甚な「問い」を愚直に追求したドキュメンタリーである。「クリエイターは、なぜ作品で表現し続けるのか」。
映画、小説、マンガ、音楽…手法は数多あれど、クリエイターは常に自分自身と向き合わざるを得ない。自分は何を表現したいのか、自分の魂からは何が湧き出るのか、それは世界に向けて表現するに足るものなのか…。クリエイターは自身の奥底から響いてくる微かな声に耳をそばだて、その囁きを聞き逃すまいとする。その過程で懊悩し、時に精神のバランスを崩す。
『クラム』©1994 Crumb PartnersⅠALL RIGHTS RESERVED
本作の冒頭、クラムはこう語る。「描いてないと気が変になる。自殺したくなるんだ。描いていても自殺したくなるけどね(笑)」
彼の身内には「声」が湧き出し続け、その奔流を制御するため、コミックという表現に打ち込んでいるかに見える。本作は、そんな彼の作家としてのルーツをさぐるため、家族や元妻、恋人に取材し、クラムの内面を徐々にさらけ出していく。その過程は実にスリリングだ。