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「ベガスのことはベガスに置いていけ」『ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』が象徴するラスベガスとは

「ベガスのことはベガスに置いていけ」『ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』が象徴するラスベガスとは

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“安全と安心の街”という落とし穴を描いた『ハングオーバー!』



 『ハングオーバー!』では、独身さよならパーティーのために悪友4人がロサンゼルスからラスベガスへと繰り出す。ロサンゼルスからラスベガスまで自動車を走らせれば5時間という距離が、現実をひと時だけ忘れさせてくれる“享楽の街”として絶妙だった。これ以上遠ければ小旅行で収まらず、近ければ日常と隔絶されないばかりか、『ハングオーバー!』のタイムリミットギリギリの展開も成立しなくなってしまう。「結婚式まであと3時間半!」というクライマックスは、リアルな距離感に裏打ちされているのだ。


 また『ハングオーバー!』は、ラスベガスの主だったロケーションで実際に撮影されている。悪友4人組のフィルたちが宿泊するのは前述のシーザーズ・パレス。ディナーに繰り出すパームス・ホテルは、酔っぱらったブリトニー・スピアーズが幼なじみと結婚(即、無効を申請)した時に泊まっていたパーティセレブご用達のホテル。歯科医のスチュが会ったばかりのストリッパー、ジェイドと結婚式を挙げたチャペルは、ラスベガス名物のお手軽に結婚式が挙げられるチャペルが並んでいる界隈に建てられたセットだ。




 ダグ・ライマン監督の『 go』(1999)など、同じようにハメを外すためにベガスに繰り出すパターンは多い。いずれの映画でも、男たちが乗り込むラスベガスはマフィアが闊歩するかつての悪徳の街ではない。重要なのは、ギャンブルやストリップといった不品行なエンタメが、行き届いた法整備の下で行われているクリーンなラスベガスであること。つまり『ハングオーバー!』のフィルたちのような一般庶民は、安全が保障された街という前提で、飲んで騒いで遊びまくろうとベガスにやって来ているのだ。


 行方不明になる花ムコ・ダグの父親の名セリフに「ベガスのことはベガスに置いていけ(What happens in Vegas, stays in Vegas.)」がある。実はこれは2003年からラスベガスの観光局が使っている宣伝用のスローガンで、ベガスでは思い切りハメを外して、元の生活にお戻りくださいという意味。ただしここまでで述べたように、現在のラスベガスは(表向きは)安全を売りにしているし、実際に治安も悪くない。そんな街で調子に乗ってみたら、常識ではありえない怒涛の珍騒動に放り込まれてしまうのが、映画『ハングオーバー!』のフィクションとしてのオモシロさなのである。



文: 村山章

1971年生まれ。雑誌、新聞、映画サイトなどに記事を執筆。配信系作品のレビューサイト「ShortCuts」代表。


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『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』

ブルーレイ¥2,381 +税 DVD ¥1,429 +税

ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント


※【お詫びと訂正】

本記事内の表記に下記の誤りがございました。

(誤):映画『 ゴッド・ファーザーPART2』に登場するラスベガスの大物モー・グリーンは

(正):映画『 ゴッド・ファーザー』に登場するラスベガスの大物モー・グリーンは


皆様にお詫びするとともに、ここに訂正いたします。

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