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『トップガン マーヴェリック』前作からの時間を一瞬で縮め、ノスタルジーと最新チャレンジの究極の融合
2022.05.26
メインのドラマから細部の名前まで受け継ぐ
1986年の『トップガン』は、その年の全米ボックスオフィスのナンバーワンを記録。年末にお正月映画として公開された日本でも、1987年度の1位のヒットとなった。それだけに続編の話は早くから浮上していたが、ゴーサインを出す権利を得ていたトム・クルーズがすぐに承諾することはなかった。『トップガン』はマーヴェリックのひとつの物語として美しく完結していたので、納得のいく脚本が仕上がらない限り、続編への意欲は湧き上がらなかったのだろう。実際にいくつかの続編のアイデアがトムには届いていたが、それらはすべて彼に拒否されていた。そもそも『トップガン』でハリウッドの最高ランクのスターの地位を手に入れたばかりのトムに、同じ役を続けて演じる選択肢など皆無だったはずだ。
しかし時は流れ、トム・クルーズが『ミッション:インポッシブル』(96)のシリーズ化でイーサン・ハント役を続投した頃から、『トップガン』の続編の話もささやかれるようになった。2010年、パラマウント・ピクチャーズが、ジェリー・ブラッカイマーと『トップガン』を監督したトニー・スコットに続編を打診。実現に向けた話が進むも、2012年にトニー・スコットの自殺によってプロジェクトは一時ストップ。そして2017年、ようやく『トップガン マーヴェリック』というタイトルとともに続編の製作が正式に発表された。
『トップガン マーヴェリック』© 2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.
長いブランクを経ての続編に、どのようにアプローチするべきか。マーヴェリックが教官となってトップガン(アメリカ海軍のエリート・パイロット訓練学校の通称)に戻ってくるドラマを軸に、難攻不落のミッションに教え子を送り出すという、ある意味でシンプルな展開に、前作の重要なエピソード、キーとなるアイテムを過剰なまでに盛り込み、一気に『トップガン』の世界に没入させる。そんな作り手の意図が伝わる仕上がりだ。
最も重要となるリンクは、『トップガン』で親友グースを失ったドラマで、どんなに時間が流れてもマーヴェリックの心にはその悲しみが深く刻み込まれている。グースの息子、ルースター(本名はブラッドリー・ブラッドショー)がマーヴェリックの教え子となる設定だが、父と同じ道を進もうとしたルースターの軍への志願を4年間も拒むなど、マーヴェリックの彼に対する愛情が、確執の源を作ったりもする。苦渋の決断を迫られたマーヴェリックが、亡きグースに切実に問いかけるシーンなども用意され、この2人の熱い友情関係は、観ているわれわれをすんなりと36年前の世界へトリップさせるのだ。
思いがけないリンクは、マーヴェリックのラブストーリー。基地近くのバーで働く、ジェニファー・コネリー演じるペニーは続編の新たな登場人物だが、マーヴェリックと過去に関係があったことが語られる。『トップガン』の冒頭で、海軍中佐スティンガーの部屋に呼び出されたマーヴェリックは叱責されたうえ、司令官の娘を追いかける彼の私生活にも嫌味を言われる。横にいたグースが「ペニー・ベンジャミン?」と相手の名前を明かしていた(字幕版では「ベニー」と誤って出てくることもある)。名前だけ登場したこのキャラクターが、続編で過去の恋人として重要な役割を果たすわけで、こちらは『トップガン』の細部を拡大させてのつながりである。