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『NARC ナーク』トム・クルーズも惚れ込んだ!社会派サスペンスの傑作

(c)Photofest / Getty Images

『NARC ナーク』トム・クルーズも惚れ込んだ!社会派サスペンスの傑作

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アウトロー監督は撮り続ける



 本作の成功の後、カーナハンはトム・クルーズに才腕を買われ、『ミッション:インポッシブル』シリーズの新作『M:i:3』(06)の監督に抜擢される。彼の前途は洋々に見えた。だが、自身のビジョンに妥協しないカーナハンはクルーズと意見を違えて、結果的にこの映画から降板することになる。後釜として、当時はカーナハン以上に無名だったJ・J・エイブラムスが同作の監督を務め、華々しくブレイクしたのはご存知の通り。


 カーナハンは、その後も我が道を行き、硬派なアクションドラマを次々と送り出す。『スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい』(06)では殺し屋たちのバトルロイヤルを絶妙のシチュエーションやユーモアとともに描いていたが、このタッチは最新作『炎のデス・ポリス』にも受け継がれる。『THE GREY 凍える太陽』(11)では広大な雪原に放り出された男たちの必死のサバイバルをエモーショナルに描き切り、アクションファンを唸らせた。これらは、いわゆる今風の派手なアクションではない。むしろ、極限状態に置かれたキャラクターの判断や瞬発力でドラマを転がす、70年代の娯楽作に近い力作だ。



『NARC ナーク』(c)Photofest / Getty Images


 最後に『NARC ナーク』のDVDに収録されている、『フレンチ・コネクション』『エクソシスト』(73)のウィリアム・フリードキン監督のインタビューについて紹介しておきたい。“『NARC ナーク』はこの先、ずっと残る作品だ”と、この名匠は力説する。彼の眼にも、本作は『フレンチ・コネクション』に通じる、力強いメッセージを持った作品に映った。しかし、70年代には受け止められた硬派な作品が、現代の観客に広くアピールするのは難しい。フリードキンはこうも語る。“『NARC ナーク』は時代に逆行している”――その後のフィルモグラフィを見ても明らかだが、カーナハンは時代に迎合しない。設定やキャラクターに面白さを見出し、骨太なドラマを紡ぎ出す。そんな姿勢、もっと言えば作家性は、今後も変わらないだろう。



文:相馬学

情報誌編集を経てフリーライターに。『SCREEN』『DVD&動画配信でーた』『シネマスクエア』等の雑誌や、劇場用パンフレット、映画サイト「シネマトゥデイ」などで記事やレビューを執筆。スターチャンネル「GO!シアター」に出演中。趣味でクラブイベントを主宰。



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