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『X エックス』驚きの配役によって実現した哲学的スラッシャー映画 ※注!ネタバレ含みます。

©2022 Over The Hill Pictures LLC All Rights Reserved.

『X エックス』驚きの配役によって実現した哲学的スラッシャー映画 ※注!ネタバレ含みます。

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老夫婦が殺人を犯すユニークな理由



 本作の殺人鬼は80歳を悠に超えるであろう老夫婦である。妻のパールは老いさらばえた自らの肉体を悲しみ、若々しく性を謳歌する撮影スタッフに憎悪の念を静かに燃え上がらせる。パールは若さを希求するあまり若さそのものを憎み、彼らを殺していくのだ。ここが本作の最もユニークして今までのホラーにはなかった切り口だ。


 〈若い頃は不思議と「早く大人になりたい」と思っていて、逆に年を取ったら今度は「若くなりたい」と思う。そういった皮肉な一面が私たちの中には存在します。(中略)人間の中のそういった相反するイデオロギーが面白いなと思い、それをテーマにして描こうと思いました。〉



『X エックス』©2022 Over The Hill Pictures LLC All Rights Reserved.


 監督が語るように、本作は断絶した世代間の抗争としてデザインされている。老いたパールは、ポルノ映画に青春を賭け、性を謳歌する若者たちに嫉妬をたぎらせる。しかし彼女は単に若さに嫉妬しているのだろうか?そうではないだろう。彼女が本当に嫉妬したのは「自己決定」するマキシーンの意思の力だ。


 世間から白眼視されるポルノに出演し、スターになることを夢見るマキシーン。将来は不透明で夢が叶わない可能性の方がはるかに高い。しかし、彼女はそうすることを自らが決定し、行動したのだ。一方殺人鬼のパールは明確に描かれないが、「自己決定」を常に阻害されたか、もしくは避けてきたと思われるキャラクターだ。自分の殻を破ろうとする若者と、自分の世界に閉じこもり続けた人間の対立が、クライマックスのゴア描写を発火させる。このユニークなテーマと構造を最も効果的に際立たせているのは、配役の妙だろう。





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