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『デリシュ!』が描く、ためになるフランス料理の歴史

©2020 NORD-OUEST FILMS―SND GROUE M6ーFRANCE 3 CINÉMA―AUVERGNE-RHôNE-ALPES CINÉMA―ALTÉMIS PRODUCTIONS

『デリシュ!』が描く、ためになるフランス料理の歴史

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地味でも説得力があるラブロマンスとしての旨味



 同時に、『デリシュ!』はラブロマンスとしての旨味も兼ね備えている。その味わいもさりげなく濃厚だ。故郷で失意の日々を送るマンスロンの前に、ある日、元娼婦と名乗るルイーズが弟子入りを志願してくる。ルイーズの情熱にほだされ、失っていた料理への情熱を徐々に取り戻していくマンスロンが、ルイーズの恐るべき秘密を知った後に選択する決断は、料理にまつわるあれこれ以上に切実で胸を打つ。


 マンスロンを演じるグレゴリー・ガドゥボワはコメディ・フランセーズに在籍する実力派で、ロマン・ポランスキーの『オフィサー・アンド・スパイ』(19)で諜報部のアンリ少佐を演じているので覚えている方もいるだろう。一方、ルイーズ役のイザベル・カレは過去8回セザール賞にノミネートされている。最初はどう見ても恋愛には至りそうもないマンスロンとルイーズが、いつしか惹かれあっていく時の意外性は、演じる2人に力があってこそ。そこが、スター映画にはないフランス映画独特の魅力だと言える。



『デリシュ!』©2020 NORD-OUEST FILMS―SND GROUE M6ーFRANCE 3 CINÉMA―AUVERGNE-RHôNE-ALPES CINÉMA―ALTÉMIS PRODUCTIONS


 オーベルジュの撮影は2019年の9月から約1ヶ月を費やし、フランスのカンタル地方にある標高1,000メートルの地に建つ18世紀に放棄された納屋を改装して行われた。そこに、主役、脇役、エキストラを含めて350人のキャストが集結する。注目すべきは、マンスロンとルイーズが薄暗い厨房に立って料理する場面に代表される、絵画を思わせる印象的なライティングだ。『セザンヌと過ごした時間』(16)や『画家と庭師とカンパーニュ』(07)で知られる撮影監督のジャン=マリー・ドルージュが意識したのは、18世紀で最も偉大な画家と言われるフランスの画家、ジャン・シメオン・シャルダンの静物画、風俗画、パステル画などだった。映像のルーツもまた、メイド・イン・フランスだったわけである。



文:清藤秀人(きよとう ひでと)

アパレル業界から映画ライターに転身。映画com、ぴあ、J.COMマガジン、Tokyo Walker、Yahoo!ニュース個人"清藤秀人のシネマジム"等に定期的にレビューを執筆。著書にファッションの知識を生かした「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社刊)等。現在、BS10 スターチャンネルの映画情報番組「映画をもっと。」で解説を担当。




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『デリシュ!』

9月2日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開

配給:彩プロ

©2020 NORD-OUEST FILMS―SND GROUE M6ーFRANCE 3 CINÉMA―AUVERGNE-RHôNE-ALPES CINÉMA―ALTÉMIS PRODUCTIONS

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