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『みんなのヴァカンス』ぼくらが旅に出る理由、この旅には続ける理由がある

(C)2020 – Geko Films – ARTE France

『みんなのヴァカンス』ぼくらが旅に出る理由、この旅には続ける理由がある

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『みんなのヴァカンス』あらすじ

夏の夜、セーヌ川のほとりで、フェリックスはアルマに出会い、夢のような時間を過ごす。翌朝、アルマはヴァカンスへ旅立ってしまう。フェリックスは、親友のシェリフ、相乗りアプリで知り合ったエドゥアールを道連れに、彼女を追って南フランスの田舎町ディーに乗りこむ。自分勝手で不器用なフェリックスと、生真面目なエドゥアール、その仲を取り持つ気の優しいシェリフ。サイクリング、水遊び、恋人たちのささやき。出会いとすれちがい、友情の芽生え……。3人のヴァカンスも、みんなのヴァカンスも、まだはじまったばかり──。


Index


ロマンチックだが、代償は大きい



 ギヨーム・ブラックは、ひと夏の経験の中に人生の縮図を描く。本来出会うはずのなかった人たちがヴァカンスの名の下に集まり、短い共同生活を送る。ヴァカンスに集う人たちは、いつの日か忘れてしまうかもしれないキラメキのグラデーションを共有した末に、それぞれの生活へと戻っていく。ヴァカンスに向かう際の希望に溢れる胸のざわめき。ヴァカンス先で味わうことになる小さな失望。相手への身勝手な期待。胸の高鳴り。それぞれの至らなさ。悔しさ。嫉妬。そして情けなさ。『みんなのヴァカンス』(20)が描出する希望と失望の感情のグラデーション、そのすべてが愛おしい。



『みんなのヴァカンス』(C)2020 – Geko Films – ARTE France


 『みんなのヴァカンス』のフェリックスは、セーヌ川の祭りで出会ったアルマに恋をしている。介護士のフェリックスは、旅立ってしまったアルマに会いに行くべきかどうか介護している女性に相談する。女性は恋愛におけるリスクをとることの重要性をフェリックスに説く。ギヨーム・ブラックの描くヴァカンスは、熱烈な希望の代償にはリスクがあることを浮かび上がらせる。あらゆる希望にはあらゆる失望への可能性が付きまとう。失望してしまうことへの覚悟はあるのか?まだ若いフェリックスを微笑ましく応援しながら、この女性は厳しい問いを彼に投げかけているかのようだ。『やさしい人』(13)の名台詞を思い出さずにはいられない。


「ロマンチックだが、代償は大きい」。


 ヴァカンス先での渓流下りのシーンは、体ごとリスクを背負うという意味で本作のハイライトでもある。川へのダイブを前に、勇気を出せず呼吸困難のパニックに陥ってしまうアルマ。アルマをサポートする”サーファー風のキザ男”。フェリックスはアルマがこのハンサムな青年に心を惹かれていることを知っている。アルマと青年が二人っきりになってしまうことを心残りにしながらも、先に飛び込むことを促されるフェリックス。さらに先にダイブに成功したアルマの姉もこの青年に心を惹かれている。いろいろな方面からの嫉妬と心配が行き交い、ドタバタ喜劇のような局面を迎えるこのシーンでは、ギヨーム・ブラックの描くリスクそのものがコメディとして見事に昇華されている。




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