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『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』故きをたずね、新しきを知る。ウェス・アンダーソンが魅せた作家性の再構築

(C) 2021 20th Century Studios. All rights reserved.

『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』故きをたずね、新しきを知る。ウェス・アンダーソンが魅せた作家性の再構築

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『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』あらすじ

物語の舞台は、20世紀フランスの架空の街にある「フレンチ・ディスパッチ」誌の編集部。米国新聞社の支社が発行する雑誌で、アメリカ生まれの名物編集長が集めた一癖も二癖もある才能豊かな記者たちが活躍。国際問題からアート、ファッションから美食に至るまで深く斬り込んだ唯一無二の記事で人気を獲得している。ところが、編集長が仕事中に心臓まひで急死、彼の遺言によって廃刊が決まる。果たして、何が飛び出すか分からない編集長の追悼号にして最終号の、思いがけないほどおかしく、思いがけないほど泣ける、その全貌とは──?


Index


ウェスらしい“懐かしさ”と“新しさ”が混合した作品



 作家性。小説家や芸術家、音楽家に映画監督……。名を成したクリエイターたちの“スタイル”、或いは“色”に対して、我々はこの言葉を用いる。それが個人の美意識によるものもあれば、映画監督のように美術監督や撮影監督、脚本家等を含めた“チーム”で作家性を構築している場合もあろう。質感や色彩感覚、構図といったビジュアル面だけではなく、死生観や感情描写、言葉選びといった内面においても、作家性は存在するものだ。


 1月28日に新作『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』が日本公開を迎えるウェス・アンダーソン監督は、まさに作家性の塊といっていい。彼の名前を聞いただけで、シンメトリーを基調とした画面構成、平行移動するカメラ、ミントグリーンやスモーキーピンクに代表されるカラフルな色使い、ミニチュア感ある建物の撮り方等々、代表作の一つ『グランド・ブダペスト・ホテル』(14)のイメージがすぐ浮かぶのではないだろうか。


『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』予告


 最新作も、『ダージリン急行』(07)以来タッグを組むプロダクション・デザイナー、アダム・ストックハウゼンや『ライフ・アクアティック』(04)から共闘してきた衣装デザイナー、ミレーナ・カノネロ、『ファンタスティック Mr.FOX』(09)をはじめ、ウェス作品に欠かせない作曲家アレクサンドル・デスプラ、編集技師のアンドリュー・ワイスブラム、キャストにもオーウェン・ウィルソンやエイドリアン・ブロディ、ティルダ・スウィントンといったおなじみの面々が集結。


 スタッフ・キャストの並びを見た時点で、『犬ヶ島』(18)以来約4年ぶり、実写映画としては『グランド・ブダペスト・ホテル』以来約8年ぶりの“ウェス組”の帰還に、胸を躍らせる方も少なくないだろう。ただ本作は、従来のスタイル――作家性という“懐かしさ”を感じさせる部分と、これまでとは一味違う“新しさ”が際立つ部分の両方が入り混じった、得も言われぬ風合いの作品に仕上がっている。


 スペインで撮影された次回作『Asteroid City(原題)』を観てみるまでは断言はできないものの、ウェス・アンダーソン監督のフィルモグラフィにおいて、分水嶺となる可能性を秘めた1本なのだ。それは今後、彼の作家性に新たな要素が加わるかもしれない、ということでもある。


 本稿では、『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』に漂う“懐かしさ”と“新しさ”を紐解きつつ、ウェス作品における位置づけを考えていきたい。




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